フランコ

白い汽船のフランコのレビュー・感想・評価

白い汽船(1976年製作の映画)
4.2
ローマの建国神話で狼に育てられたロムルスとレムスのように、祖先は鹿に育てられた戦争孤児だと伝える祖父とそれを信じる7歳の孫ヌルガズィ。多重露光などの撮影技法を駆使し、身の回りに同世代の遊び相手がいない少年のファンタジーな脳内を描く。

映画の最初に祖父がもうすぐ学校に通い始める孫のためにトレーラーの行商人から黒い鞄を買ってあげるシーンで、商人が孫にカバンを渡すときにスローになりシュニトケの不穏な音楽が流れるシーンが怖いが、 序盤は少年とギリシャマル(兄セドフマドの妻)が日照豊富な山の斜面で双眼鏡片目ずつシェアして覗く、など戯れ多幸感溢れている。いかにも荒くれ者といった岩みたいな顔つきの落ちぶれた有力者アラズクルに子どもができないことの苛立ちから妻に暴力を振るったり、祖母もとにかくシニカルでアラズクルに妻を変えてはなどと持ちかける(アラズクルは「ギリシャマルは人妻だぞ、捕まってしまう」と言うのに対し「届け出なければ誰もわからないよ」と返したりと悪い)など、段々と家庭のほころびが祖父と孫を追い詰めていく。この逃げ場のない山のムーラー『山の焚火』に通じる。ギリシャマルは眉毛が繋がりそうだが、かわいい。
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