Ricola

ゲット・アウトのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

『招かれざる客』の裏バージョンのような作品。裏というのは、皮肉や人間の闇の部分をもってそう表してみた。
白人の女性ローズの恋人は黒人のクリスという青年。ローズは家族に彼を紹介しようと、実家に彼を招く…。このことがすべての元凶だった。
黒人のクリスは写真家で、オープニングクレジットから、彼の部屋にある写真が映し出される。その被写体は全て黒人である。彼は黒人社会で生きてきたのだろうと安易だが想像がつく。


ローズの家族に会いに行く道中で彼女が鹿を轢き殺してしまうところから、もう不穏な空気の下地は出来上がっているよう。

家族や知り合いの白人たちは優しそうなほほ笑みを浮かべるけど、その優しさの裏に何かがあることは明らかなほどに薄っぺらさをすぐ感じとれる。
クリスが黒人だからといって、オバマ大統領やタイガー・ウッズを褒めたり、体型や運動能力を褒めるのは、黒人へのステレオタイプゆえだ。ただそれだけで済めばもはやいいくらい…。
黒人への決めつけつまり偏見が、彼らの恐ろしい動機となる。ローズの母がスプーンをゆっくりかき回す金属音がカチカチと響き渡る中、クリスは突き落とされる。意識の奥底に入りこまれたのだ。自分ではどうしようもできない支配下へと沈められたのだ。

ジェットコースターのように後半が展開されるにつれて、人間の恐ろしさは作品の深いところに結びついているというより、このアトラクションの要素の1つとして組み込まれているだけのように感じた。
人種差別がテーマではあるが、そのしぶとい歴史や思想を深く掘り下げるというよりは、人種差別問題の根本にあるであろう憧れと蔑視の混ざった思いを利用したスリラー作品という印象で、娯楽映画という側面が強いと感じた。
Ricola

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