せびたん

ゲロリストのせびたんのレビュー・感想・評価

ゲロリスト(1987年製作の映画)
4.2
ずっと流れてる不穏な空気感が素敵な作品かと。
主演のお姉さんが感じさせる過剰な生命力?存在感?もいい感じ。
見てて飽きないというのがいいところ。時間的にギリギリ緊張感が保たれていた。

ゲロのシーンの背景の機械音は、ひょっとしたらゲロ製造マシンの音だったのかな、なんてことを思いながら見てました。

また冒頭で妄想あるいは悪霊に取り憑かれた女性を、その後のシーンで一人称カメラが追いかけるんだけど、悪霊(または妄想)目線のカメラかと思ったら突然三人称的な描写を始めるから、物語という虚構が破綻してリアルな感情がゲロみたいに吹き出してくるのもおもしろかった。

クライマックスも同様。
夜の繁華街で「私を殺しなさいよっ!」的なことを通行人に言い続ける主人公の女子(というか唯一の出演者?)。道ゆく人たちは、おそらく女子の背後にあるカメラの存在等から事情を察知して適当にあしらうのだけれど、女子の行動を映画内の物語としてみている私たちには、ある意味どちらも(殺しなさいよという女子も適当にあしらう通行人も)リアルなこととして捉えられるから、女子と世界のあまりの齟齬っぷりに眩暈がしそうになった。そりゃゲロも吐きたくなるわ。

ところで。

1987年というとブラックマンデー。私の記憶の中ではバブル崩壊の始まりの年って気がしてて、その後の数年は《祭りのあと》って気がしてたけど、実際はブラックマンデー後に株価なんかは最高値をつけてたみたいです。なんともお恥ずかしい勘違いでした。
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