たく

女の中にいる他人のたくのレビュー・感想・評価

女の中にいる他人(1966年製作の映画)
5.0
超久し振りに観て、やっぱり新珠三千代で一番好き。女の強さ怖さを描く成瀬巳喜男監督の珠玉の名作で、白黒のコントラストが効いた映像にサスペンス感と新珠美千代の美しさが際立つ。13年前の初観賞時のレビューを以下記載。
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(2009/3/10)
今まで観ていなかったのが勿体無い程の名作。成瀬監督には珍しいサスペンスで、最初から小林圭樹が犯人と匂わせる演出がサスペンスとして物足りないが、実は作品の力点はそこにはなく、密かなどんでん返しが主題と結びついている。

後半までずっと男目線で進んでいくのだが、最後には女の価値観で終結するところ、さすが成瀬監督だ。男はロマンチックに陶酔して自己崩壊し、女は現実的で力強く行き抜く。
生命として強いのは結局は女なんだね。成瀬作品に一貫するテーマだと思う。役者では新珠三千代が素晴らしすぎる! 今まで2本くらい出演作を観たが、これは飛びぬけた傑作。
こういう奥さんは日本男児の理想ではないか?

実際、こんな事件がなければ申し分のない最高の奥さん、最高の家庭だったはずなんだよね。前半は脇役かと思うほど抑えた地味な演技だけど、後半に入って切実な表情を見せ始めるところから魅入られっぱなし。いい作品が1本でもあると、たちまちファンになってしまう。あと、どーでもいいけど若き黒沢年男がバーの店員役で出ていた。
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