スギノイチ

鏡の中の野心のスギノイチのレビュー・感想・評価

鏡の中の野心(1972年製作の映画)
4.0
映画冒頭、荒木一郎演じる主人公の詐欺師が温泉街に降り立つ不敵なシーンからもう好きだ。
こいつ、明らかにこれから碌でもない事をしやがるぞ、という素敵な予感がする。
混浴にて驚異の巨根でマダム達を魅了し、コマし散らす荒木一郎は、自分をじっとみつめるひし美ゆり子の視線に気づく。
「あの女の眼は俺の過去を知ってる目だ」。ひし美ゆり子の目のアップにタイトルが重なる。
OPからしてとても格好良い。

今観ても全く色褪せないひし美ゆり子のルックスもさることながら、常に人を食ったような態度で飄々と悪行を重ねる荒木一郎の成り上がりぶりが憎らしくも面白い。
人でなしの詐欺師の癖に、妙に力が抜けていて憎めない。女をコマす時でさえ妙にとぼけている。
ひし美ゆり子と組んでからはもう無敵状態で、口八丁手八丁であっとういう間に美容学校を乗っ取ってしまう。
対抗勢力の小悪党どもの悪だくみなんぞは、さらに悪どいやり方で蹴散らしていく。
豊満な美女と爬虫類的知能犯の非道徳コンビが何ともハマっている。
こんなに捻くれた2人だが、悪事を通して惹かれあったのか、徐々にピュアな恋愛ドラマをやり始める。
らしくないな、と若干鼻白んでしまったところで気持ちの良いどんでん返しが待っている。
そして、単に荒木一郎を因果応報の目に合わせた所で終わらないのがこの映画のいいところだ。
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