あなぐらむ

狂棲時代のあなぐらむのレビュー・感想・評価

狂棲時代(1973年製作の映画)
4.0
シネマヴェーラ渋谷・芹明香特集の際に鑑賞。

風間杜夫が若くナイーブな感性全開で、童貞青年の鬱屈と不器用ながらも愛を掴んでいく様を、山科ゆりをヒロインに瑞々しく描く白鳥信一印の青春映画。
そりゃあ最初の相手が絵沢萠子さんなら、その後つらいよね、は冗談で、両親の愛を受けられず育ち、聖母を希求する青年の話なのである。

脚本がいどあきおなのがポイント。いどはこの後田中登&芹と「女郎(秘)めす市場」を送り出すが、本作で一人「受胎告知(めす市場の脚本題)」を受けているのが芹明香。山科ゆりの「妊娠したの(芹が)」という台詞から始まる点を見ても、その助走が始まっているのが分かる。

薄幸クイーン・山科ゆりは本作でも魅力全開。
樋口尚文さんは山科ゆりの魅力を「不定形さ」と表しているが、実に15本の出演作がある1973年の「狂棲時代」でも肌荒れは少々気になるものの、雪白の肌の可憐さと絡みになるや、やにわに濃密なエロスを発散し出す様は、ヒロインに十分。風間とは「古都曼陀羅(小沼)」「真夜中の妖精(田中)」でも共演。