半兵衛

狂棲時代の半兵衛のレビュー・感想・評価

狂棲時代(1973年製作の映画)
3.0
恋人と関係性に悩む風間杜夫の性と愛を巡るドラマで、タイトルからもわかるとおり当時人気があった漫画『同棲時代』からインスパイアを受けた一本。鹿島茂の『甦る昭和脇役名画館』の芹明香の件に記載されていながらフィルムが長い間消失していたため伝説の映画としてマニアのなかで語り継がれていた一本でもある。ちなみに近年ニュープリントが焼かれて、たまに名画座やポルノ映画館で公開されている。

映画ファンからその凡庸な演出ぶりから小馬鹿にされがちな白鳥信一監督ではあるが、本作は映画デビュー作品となるいどあきおの脚本が良いこともあってか結構頑張っていてそれなりに見ごたえのある青春ドラマに。ただ後半、色んな波乱が巻き起こっているのに投げ出してしまい強引にハッピーエンドにしてしまうラストに「ああ、やっぱりこの監督は…」と残念な気持ちに。いくらなんでも彼女があんな目にあったのに頑張ろうってすぐにならないよ。

日活ロマンポルノ初期の常連俳優であった風間杜夫が見事にやり場のない性への感情で鬱屈した青年を好演しており、こうした「性」で怒れる青年像は後年のピンク映画での下元史朗に引き継がれていく。そして恋人役の山科ゆりの可憐な美しさ(何とこの年12本も出演している)や童貞を奪う絵沢萠子といった女優たちが安定の演技を披露しており、こうした演技の質がプログラムピクチャーには欠かせないことを再確認。ちなみに芹明香は鹿島茂の本では「風間杜夫に強姦される少女」と記載されているがそれは間違いで(恐らく大分前に鑑賞したので記憶違い&芹に似合いそうな役柄だから勘違いをしていたと思われる)、優しい彼氏と同棲生活を送る女子大生というヒッピーな役柄を演じたら日本一の彼女とは程遠い役を演じている。実際普通の女性演技がぎこちなくて違和感があるが、キャピキャピしている等身大の彼女の姿も可愛らしくてこれはこれでありかなと感じてくる。

タイトルは酷いけれど、その割には際ものになる寸前で踏みとどまりそれなりのドラマに仕上がっている。ただカルト映画的な内容を期待していると裏切られることに注意。
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