糸くず

娘よの糸くずのレビュー・感想・評価

娘よ(2014年製作の映画)
3.6
虐げられる女性たち、砂漠と荒野を駆け抜けるトラックと『マッドマックス 怒りのデスロード』と重ねて語りたくなる要素が見受けられるが、この映画はアクションで組み立てられた映画ではないし、反逆の物語でもない。

母親のアララッキは因習の犠牲者であり、武器も力も何もない女性である。彼女が逃げ出したのは娘を守るためで、それを果たすには男の力に頼らざるを得ない。見ず知らずのトラック運転手に頼るのは危険な賭けであるが、そうすることでしか娘を救えない。わたしは「アララッキは弱い」と言いたいのではない。彼女は暴力に抵抗する力を持てない状況に追いこまれている人であり、そういう人が「逃亡」という決死の判断を下すほど、娘を思う母の思いは強いのだ。

つまり、スリラーとしての恐怖を始めから志向してはいないわけで、だから、『マッドマックス』とは全く別の映画ではあるのだが、それでも、追っ手の男たちやアララッキの義理の弟に男性の暴力性をもっと強く刻みつけてもよかったのではないかと思う。だって、男たちが圧倒的に悪なのだから。
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