140字プロレス鶴見辰吾ジラ

亜人の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

亜人(2017年製作の映画)
3.8
”Someone,Call 911”

漫画実写化には2種類あると思う。1つは、映像で実写化するコスプレ大会、2つ目は哲学を投影するアート系統。

しかし「亜人」の実写化には、愛がなければ哲学もない。衣替えも借りたアクション映画願望の実験室のようだった。

そりゃなんてたって綾野剛!!

冒頭の組織浸入からの銃撃戦のキレッキレなガンアクション!構えからリロードから「亜人」そっちのけの大塚芳忠モノマネまで入って外連味たっぷりの邦画版「ジョン・ウィック」への挑戦。

かと思えば危険なネタでスリル満点のテロシーン。そして庵野がゴジラと自衛隊なら綾野はSAT相手に無双モード。死ねない体をリセット&リフレッシュしながら闘う様は爽快そのもの。

何より冒頭から臭い人間ドラマを放り込む式世界観の回想描写でテンポを維持すると、見せたい!やりたい!アクション描写で無能な警察、無能な邦画ドラマパートを煙に巻く芸達者!!

ツッコミどころが多いものの、アクションとテンポで気に留めさせないエンタメ思考の紳士性がキッパリしていて胸を撃つ!

とまあ、アクションのエンタメ化をする際に、登場人物の偏差値を思い切って40以下の商業高校並みに落とした商業映画としておきながら、ボンクラ映画ファンに堪らないアクション描写で逃げ切ろうとする潔さについつい高得点を出したくなる。

原作の哲学を感じさせないものの、あくまでアクション映画とその可能性を開こうとする、実験的映画だった印象。キャラの関係がどうのこうのより、しまむらファションでガチガチのスタイリッシュで決めてくる新たなタイプの漫画原作実写化ものとして価値ある1作だったと言える。


追記)
作品の偏差値を下げたためか上映中に普通にしゃべる客が多く驚きました。ヒカキンがネタで出てきたあたりからか、落ち着かずに喋り出す客が散見。何か実験場としての黎明期のそれなのか何かを感じました。

それでもボンクラ映画臭いが確かにするこの映画は嫌いじゃありません。