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光のKHのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
4.5
こんなに美しい終わり方をする映画を今まで観た事がない。最後を観るためだけに、もう十数回は鑑賞した。
河瀬直美監督の書き下ろし作品は、比較的に抽象的で独りよがりな作品が多いが「光」は、わかりやすいストーリーかつ河瀬監督の映像も楽しめる作品。
目の見えない人に向けた副音声を書く仕事をしている主人公演じる水崎綾女と、盲目の男性を演じる永瀬正敏の物語。
副音声は目の見えない人にとっては映像より大切で、その映画の評価を左右するほど難しい。また副音声を入れることとは、映像を解説することであり、副音声に主観が入り過ぎても映画の世界が狭まるし、言葉足らずでも映画の世界が完成されない。
でも目が見えないからこそ、映画の音と副音声だけで想像がずっと膨らむ。

水崎綾女演じる主人公は、河瀬作品には珍しくヒロインチックな演出がなされている。
主人公と目の見えない人との間で、または主人公とその映画の監督との間での会話が噛み合っていないことが多い。そこに凄くリアリティがあった。

映像は本当に美しい。
特に今作はいつも以上に顔や手元などアップになることが多く、その他の視覚的情報が入ってこないのは狙った演出か分からないけど、良いように作用していると思う。

最後のシーンは自分が今まで見た映画で1番好きな終わり方。
最後に光を描いても、説得力がないと何も響かないけど、監督の作品は今までの映像が最もの説得力になっているからこそ本当に、そこに光を感じる。
またナレーションの樹木希林が素晴らしい。
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