takuji

光のtakujiのネタバレレビュー・内容・結末

(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

日本語字幕付上映を観た。
よかった。
お客さんに視覚障害者の方が何人もいた。

視覚障害者のための映画の音声ガイド製作という仕事を初めて知った。
ガイド音声のナレーターじゃなくて、そのガイドテキストを作成する仕事。
これは難しい作業だ。音声ガイドって、映画の実況じゃないしストーリーの朗読でもない、ラジオド

ラマのようなものでもない。
登場人物の表情をどう表現するのか。背景は?、全体の映像は?
そこにはテキスト作成者の主観や解釈が入り込む余地がある。それらをどこまで入れていいのか。
過剰ではいけない、余白がほしい、足らなくてもいけない。

その作品の脚本家でもなく、監督でもない、作品製作に関わっていない人がそれを作るなんて難しす

ぎる。

美佐子も苦悩する。
美佐子はそもそも音声ガイド作成者としても視覚障害者との関わりにおいても素人、とうか初心者。
その初心者美佐子の視点で視覚障害者の生活について基本的なことが描かれる。
音声ガイド製作のモニターである中森の生活を垣間見ることによって、美佐子は少しずつ何かをつか

んでいく。

美佐子個人のことはほとんど描かれない。
なぜ音声ガイドを作る仕事に就いたのか。この仕事は職業なのかボランティアなのか。
もともとどういう人間なのか。
ただ、田舎の両親のことだけが紹介される。
美佐子も心に何かを抱えて生きている。

光を失いつつある元有名カメラマン中森。
視覚障害者としてはまだ初心者。生活のあれこれに躓いてしまう。
白杖を持たず、まだ自分を受け入れられないイライラの毎日。
かつてのカメラマン仲間、後輩と会ってもわかってもらえなさと疎外感が募るばかり。
中森の大事なカメラを奪った後輩の行為は悪意からなのか、中森を想ってのことなのか。

美佐子も中森も光を探している。
その光を夕陽の中に見つけたときに、それぞれが何かをつかむ。
ちょっとぎこちないストーリーだ。

役者さんがみんないい。
永瀬正敏さんも、藤竜也さんもいい。
水崎綾女さんも好演だ。
作品全体がぎくしゃくとぎこちない。ストーリーがぎこちない。
敢えてそうしている。
中森も美佐子もぎくしゃくしながらぎこちなく生きている。
水崎さんの演技はこれらのぎこちなさに合ってるのかもしれない。

ただ、ラストの樹木希林さんはズルい。彼女がすべてもっていってしまった。

音声ガイドによる映画鑑賞、いつか体験してみたい。
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