青二歳

射撃場の青二歳のレビュー・感想・評価

射撃場(1979年製作の映画)
5.0
1979年製作の反資本主義プロパガンダアニメーション。アメリカの失業者たちを生きた標的とする射撃場が大流行りするという(!)歪んだアメリカ社会を揶揄した作品…なんてディストピア!!

ただこのアメリカ…いちいちアメリカン・ポップカルチャーの表象に満ちた描き方になっていて、ちょっと楽しそうな社会に見えます…摩天楼、大企業の広告、アメリカタバコ、アメ車、ミッキーマウス、コンバース、パンタロン、コカコーラ、有り余る食材(ソ連はこの頃物資不足)、若者たちのヒッピースタイル…etc.
他にもBGMがそもそもジャズでオシャレだし、射的の的にミッキーマウスがいたり、後半のイメージシーンに出てくるカートゥーンのうさぎや、ロビンス振付のモダンなミュージカルのようなシルエットなどなど沢山。うーん…西側からの情報をあんまりにもシャットアウトした反動なのでしょうか。アメリカ文化への憧憬が伺えます。いや憧憬というのは西側から東側への傲慢な見方かもしれませんが。

その点の考察は置いておいて、ここで描かれるこのアメリカ社会のディストピアっぷりは極上のSF短編のようです。資本家に生殺与奪権が握られた社会。いや楽しかった。プロパガンダとしての機能でいえばそんな上手くはないと思いますが、これは今見ると別の機能を果たしてくれます。
失業者の若者がある女性と出会い結婚した後も、射撃場の的で在り続け、そこで暮らし続けるというのが何より面白い。
青二歳

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