昼行灯

有馬猫の昼行灯のレビュー・感想・評価

有馬猫(1937年製作の映画)
3.9
猫じゃらしや行灯の油なめなど、歌舞伎からの演技はない。むしろ行灯シーンでは澄子の背後から撮影されていて、人間感ある。猫表象としては、猫の鳴き声が被せてあるのと、手を丸く握ること、そして動きが俊敏になったことが挙げられる。澄子がずっと伏し目がちだったのに、猫パートになると横や斜め上をきっと睨みつける演技は、まさにヴァンプの魅力である切れ長の目そのものであり、人間同士のような戦闘シーンからしても、まだまだヴァンプとしての澄子の残り香を売りたいという気持ちが新興キネマ側にあるのかと思った。対するお姫様キャラの森静子もかわよい。

猫パートでは、お囃子、澄子が声を発さず、代わりに外部から猫の声が挿入されていること、また機敏な動きから人形振りのような印象も受けた。主人の恨みを晴らすという激情からもそういえると思う。階段を昇る澄子のティルトアップは、人ならぬものの気配を充分に感じさせた。
昼行灯

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