けーはち

君のまなざしのけーはちのレビュー・感想・評価

君のまなざし(2016年製作の映画)
3.2
バイトで学費を払う苦学生が夏休みペンションの住み込みバイトを始めたら死霊に遭遇、前前前世がどうこうの因縁で異次元に通じる“門”を守る戦いに駆り出され──という、降霊術教祖で一部の好事家に大人気の宗教団体が制作した、スピリチュアル・ファンタジー映画。

★君の名は。……ではなくて、まなざし

この宗教団体の得意分野、雑多オカルトとSFの融合要素は皆無で、特異性は薄いファンタジー映画になってしまっているが、信者向けお布施映画という以上にそこそこの娯楽作に出来ている。昭和特撮を思わせる雑なVFXを使った心霊シーンに、撒かれた伏線回収、前前前世パートではそれなりの殺陣あり、意外にもドンデン返しあり。

演技については曰く言い難いものがあるものの、英語字幕上映もあり、字幕を読んでいると日本語の演技はある程度聞き流せて済むので、ありがたい措置であった。

★闇落ち大川Jr.

脚本・助演の大川宏洋は教祖の息子。劇中の役どころは主人公とは親友であったが、闇落ちしてしまったヴィランであり、その経緯が「高い霊能力を持ってしまったために世間に阻害され、また父親に過度な期待をかけられ自暴自棄になる」というある意味、盛大な父親disをやってのける。それよりは前前前世のトラウマの方が遥かに大きいのだが。

基本的に役者としては大根の大川Jr.だが、負の感情の発露が激しくなるシーンでの苦悶、泣きの演技は真に迫っている。きっと他人と違う宗教家の父親を受け入れるまで葛藤の激しい幼少期だったんだろうな。

前前前世パートでは、平安貴族の悪業に逆上し槍を持って貴族を殺しまくる闇落ちランサー大川Jr.の前に、巫女の加護を得て七支刀を持った主人公が立ちはだかる。

ところどころ結構な分量のありがた〜いスピリチュアル説法シーンがあるが、こういうのは、キッズ向け特撮ヒーローの変身からの名乗りシーンみたいな様式美的なシーケンスだと思っておこう(良いことを言ってはいるはず)。それよりも、父親の宗教を経済基盤にした上で説法ノルマを盛り込み、後はやりたいように映画を撮っている大川Jr.が大変微笑ましい。

そしてエンディングテーマは教祖の作詞・作曲で、大川Jr.が歌う。もう好きにしてくれ。

正味、稚拙なところだらけであるが、こういうヘンテコな出自をもったヘンテコな作品が出て来るのは面白い。