チッコーネ

荊棘の秘密のチッコーネのレビュー・感想・評価

荊棘の秘密(2016年製作の映画)
4.0
さほど期待せず観始めたのだが、強烈な力作。
居丈高な女の狂気を噴出させたソ・イェジンは役柄に対し、美し過ぎるきらいもあるが、ポスト・チョン・ドヨンと讃えたくなる熱演。
髪形といい、ブルー系の衣装といい『ポゼッション』のイザベル・アジャーニをも彷彿とさせる…、「ヒョンビンの妻」と甘く見ては大間違いの自立したチャレンジ精神に、女優魂を感じた。
加えて豪『乙女の祈り』や仏『小さな悪の華』を想起させる女子高生2人組のアンファン・テリブルぶりも凄まじく「この設定だけで、1本撮れるじゃん」と感じさせるほど。
音楽ユニットを組んだ彼女たちの楽曲は、正しくニューウェーヴ。
制作が『仁川延寿区東春洞小学生殺人事件』より早いのも、何やら怖い。
さらに終盤は韓国映画でいちジャンルにまで高められた「復讐もの」へと雪崩れ込む…、しかもメインキャラクターはあくまで女性たち、締めの台詞には呪縛の力すらある。
脚本がパク・チャヌクで、監督は恐らくその弟子と知り、思わず納得。

といった具合に展開はヘビーなのだが、編集はトリッキー。
「台詞で事実を語った後に、回想映像を挿入する場面」が多いなど、観衆を攪乱する遊び心と、醒めて客観的な視点が全編に貫かれる。
美しい照明に支えられたロングショットなど趣味の良い撮影も多数、愚直に筋を追うだけの映画でないことは、明らか。