テリーマザーファッカー虎

WHO KiLLED IDOL? SiS消滅の詩のテリーマザーファッカー虎のレビュー・感想・評価

WHO KiLLED IDOL? SiS消滅の詩(2017年製作の映画)
3.7
前作『BiS誕生の詩』の裏ではなにが起きてたのかというスピンオフ的な側面とその後の後日談的な要素を含んだ作品でした。

前作はあくまでオーディションに受かったBiSのドキュメンタリーで所謂向こう側の人達、もしくは向こう側にこれから行く人達の話だったのに対して、今作は向こう側に行けなかった、もしくは行く気のない人達の話ということで必要以上に泥臭くてどうしようもないお話でした。だからこそ自分は今作の方が好きでしたね。

前作でも異物感を放っていたつばさレコードのインターンであり"普通の大学生"山下さんの目線で物語が進んでいくのが非常に面白かったです。
右も左も分からない人間がアイドル業界という異常な場所に放り込まれていく様はお仕事物のような面白さもありましたし、普通じゃない人だらけの中であくまで普通に生きていくことを選択していく彼女の目線だからこそこの業界の異常性だったり魅力だったりが伝わってきた気がします。
途中一般の女性に「アイドルになる子ってどう思います?」と質問したときの回答だったりと、今作は普通の人の目線を入れることによって映画のバランスを取っている気がしてとても良かったです。

そしてなにより今作の影の主人公であるSiSプロデューサーの清水さんが本当に素晴らしい。
ダメ過ぎて滅茶苦茶しょうもない人なんだけどなんとも愛らしいさがあるというか人間的魅力はずば抜けてありました。
実際には全く関わりたくない一人ですけど渡辺プロデューサーと同期で彼ほどのカリスマ性もなく人望もなく常に影に隠れながらも野心を捨てきれない彼の様は心打たれるものがありました。

いい年した大人達に振り回されていく若い女の子達の記録って感じで僕は大好きでした。