kissenger800

私はあなたのニグロではないのkissenger800のレビュー・感想・評価

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BLMが大きなうねりとして聞こえてきたのは去年5月のことですから、その時期から「あ、見なきゃ」と思ったまま、積ん読的ポジションだったこの作品。
作中で引用される史実やフィクションのたいていを知識として持っていたせいで、積んだはいいけどあえて見るためのきっかけが無かったわけですが、なんかね、たまたま中村隆之『野蛮の言説』(2020、春陽堂ライブラリー)って書籍を読んでいたんです。
ヘイトスピーチの背景には他者に向けるヘイトによってしか浮上できない自我があって、その自他を相対化することからしか未来は生まれない-みたいな話かねえ。と、コンゴ自由国におけるジェノサイドとかナチ優生学とか日本における差別が呼んだ虐殺行為とかの考察を読みながら、うーむ。
って気をとられていたら、うっかりこれを再生してしまったんですけど(わりとマジ)この作品、ドキュメンタリー体裁とはいえ、基本はジェイムズ・ボールドウィンの主観を追体験することになるんですよ。
それで、彼の視点の根底にあるのは、自分で考える「相対化-または客観視-の徹底」のように感じたんです。ええ、たぶんそれ、読んでた本に引きずられすぎなんだけど。
でもまあ、こういう敷居の高い系の作品は、そうやって「ついうっかり」軽率に見てしまうぐらいがちょうどいい気はしますしね。時間をおいて見たら、またぜんぜん違う感想になるはず。
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