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散歩する侵略者のdiesixxのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
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概念を奪う侵略者の静かで着実な計略を背景に、壊れた夫婦の再生とアウトロージャーナリストとマイペースインベーダーのバディーアクションが並行して描かれる。最初見た時はホラー、コメディ、SF、アクション、ラブロマンスのバランスがチグハグな感じがして、あまりノレなかった覚えがあるが、今となっては数年に一度見返したい黒沢清でも指折りのフェイバリットとなった。
世界の破滅につながる大規模な侵略計画を、ミニマムな日常の異変からとらえていく語り口。ほとんどエイリアン側に感情移入するような人類へのドライで突き放した姿勢を貫きながらも、他者とのコミュニケーションを予感させる結末の不思議な余韻など、監督が敬愛するジョン・カーペンターのSF作品を思わせる。
松田龍平、高杉真宙、恒松祐里はいずれも宇宙人らしい奇妙な言動と知性のバランスが絶妙。彼らに概念を奪われる前田敦子、児嶋一哉、満島真之介のタイプの違う豹変ぶりも見事だ。光石研の変化はちょっとオーバーアクトだったが、長澤まさみに肩揉み断られたときの感じの方が怖い。そして東出昌大は宇宙人に乗っ取られたわけでも、概念奪われたわけでもないのに、一番不気味。この人は黒沢清向きの俳優である。
終始不機嫌ながら世話を焼いてくれる長澤まさみのキャラクターも最高。噛み合わない夫婦の会話にゲラゲラと笑っているが、やがて不可解で切実な愛の形に涙してしまう。
他の人も言うようにエピローグはやや説明的で蛇足感がある。ただラストカットもまたカーペンターっぽい。
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