Kaito

散歩する侵略者のKaitoのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
3.3
U-NEXTにて見放題作品として配信されていたため、鑑賞。黒沢清監督作品第15弾。行方不明だった加瀬鳴海(演:長澤まさみ)の夫加瀬真治(演:松田龍平)がある日突然家に帰ってきた。しかし彼は別人のようになっており、記憶も欠損していた。そんな彼は毎日散歩しどこかに出掛けている。同じ頃ジャーナリストの桜井(演:長谷川博己)は一家惨殺事件を追っているうちに奇妙な少年と出会う。そして彼は自らを宇宙人であるとし、侵略を企てているらしい。事件の首謀者の立花あきらも同じ宇宙人で2人は真治と出会おうとしていた。そしてついに3人は出会ってしまう…という話。黒沢清監督が宇宙人の侵略の話を作るとこうなるのか、といったような作品だった。この宇宙人の設定として彼らは知らない概念を他者に頭の中で想像させてそれを奪う。すごい設定であり、面白い。この作品も加瀬夫婦と桜井との2つの話が同時に進み最後に話が合流するという流れ。黒沢清監督作品によく見られる流れである。概念を奪う宇宙人が人間を侵略しようとする。文字に起こすとだんだん不気味さが増してくるような気もする。設定が良かっただけにクライマックスはもう少しだけ頑張って欲しかった。私が言うのはおこがましいということは重々承知で言うと、絶対にもっと良くなったはず。人間が想像できない漠然とした概念(作中における愛)は宇宙人をも変えてしまう。宇宙人から見れば地球にいる人類も宇宙人である。言葉とその概念を奪われることがどれだけ恐ろしいことか。作中では概念を奪われた途端に人格が変わったようになり退化する。言葉やその概念が人間にとっていかに重要なものであるか、人間はいかに脆い生き物か、ということが切実に伝わってきた。人間という生き物は実は自分たちが思っている以上に中身のない生き物なのかもしれない。
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