あでゆ

散歩する侵略者のあでゆのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
3.1
鳴海の夫・真治が、数日間行方をくらまし、別人のようになって帰ってくる。これまでの態度が一変した夫に疑念を抱く鳴海は、突然真治から「地球を侵略しに来た」と告白され戸惑う。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こったのを機に、さまざまな現象が発生し、不穏な空気が漂い始める。

『クリーピー 偽りの隣人』のような不穏さは限りなく漂わせつつも、原作のあるSFにその異様さが落とし込まれたために良い意味で万人ウケしやすくマイルドに、悪い意味で棘が丸くなったと感じた一本。

登場する宇宙人が割と早い段階で概念を奪うという種明かしをしてしまい、ネタ的にはそれ以上のことがあまりにも起こらないのもそうだが、なによりラストに宇宙人が奪うものについても結構目立つ伏線の張り方をするため、正直に言って予想外のことがあまり起こらないことがマイナス点。
オープニングのインパクトが大きかっただけに、段々とスケールダウンせざるをえない。

とはいえ、宇宙人によって奪われた人々は大体皆どこか幸せそうで、彼らがやっていることがどうにも責められないことがもどかしく面白い。人がどれだけ普段から抑圧されているかということについて考えさせられるし、単なる風刺コメディのようでもある。

特殊効果はあくまでもサスペンスをコメディに仕立て上げるための風味として、一方でシリアスさを盛り立てる道具は松田龍平、前田敦子をはじめとする並外れた演技力のみで押し切っている点も良かった。
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