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ビフォア・アイ・フォールのソウルのレビュー・感想・評価

ビフォア・アイ・フォール(2017年製作の映画)
3.6
結果的には色々なモヤモヤがありながらも、良いシーンも幾つか散見される個人的に問題作。

・良い点
タイムループものは散々擦られまくってるという点目新しさはないが、面白いなと思ったのは主人公に明確なゴールや問題定義を与えていないという点。
それが故に様々なシチュエーションで多様性に富んだ描き方が可能になっていて、ループものが描きがちな主人公が二歩進んで一歩下がるという基本は前傾姿勢な成長過程をある意味払拭している。
そこで、あえて人を成長させるどころかどん底まで堕ちさせる事で"気づかせる"という悟らせ手法には物凄く説得力があり、周到されたタイトルにも腑に落ちることができた。
欺瞞に満ちた毎日の中では迎合することが上手く生きる道になってしまうが、恐れずに真理と向き合うことの大切さも必要だということだよね。

・モヤモヤな点
所謂"一軍"にいる4人の中で一番ニュートラルな立場である彼女にこの試練を与えたことは現実的ではあるが、劇中に出るシシュポスの話と噛み合わすとなると、リジーのような人物に試練を与えるべきではと感じてしまう。虐めにも迎合し自分の立場を担保するという現実あるあるのキャラ設定でも罪としての換算はできるが、サマンサには本来"良い人"という大きな穴があるので、この試練が多少理不尽にも思えてしまう。
そしてここで出る"本来は良い人"という設定には演出上の問題を感じる。それは本来の素の姿を描く上では大事な家族関係を冒頭で良いものとして描かなかったため、その説得力が終盤まで薄れるという矛盾が発生。結果的に妹や家族との時間を大事にするシーケンスでのカタルシスはあるのだが、家族関係をそもそも深堀していない点で無理矢理なプロットにも感じてしまい感動が半減。冒頭で妹に私のものに勝手に触るなと言ったシーンは最後で回収されるまでひたすらにモヤモヤしていた。
つまりなところ、主人公のキャラ設定に意外な荒が目立つことと、内容を盛り沢山にしたことでカタルシスを感じにくくなっている。シーンを切り抜けば本当に良いシーンが多いので、ここまでやるのならもう少し尺を長くして家族関係を丁寧に描いても良かったのではと思ってしまう。
もしくはいっそ家族関係は剥いで、友人関係や人生観というものだけにフォーカスを当てればスッキリ見れたのでは。
そして意外なとこで主人公が呑気だったりもするので、ただ振り回されているようなストレスも時折感じた。

最後のオチに関してどうこうは思わないが、死による解放がハッピーエンドとも解釈できてしまう不思議さに、作品としての意義があったように感じた。
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