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ケイト・プレイズ・クリスティーンのkunicoのレビュー・感想・評価

3.9
ニュース番組中に自殺した女性キャスターを描く映画を撮影する為に、役作りにのめり込んでいく女優の姿を追ったドキュメンタリー。

正義を証明する為、ジャーナリストとしてのプライドを胸にこの世を去ったクリスティーン・チュバック(動機は全て闇の中だが私はこう思った)
彼女は朝の生放送中に銃口を自身に向けて引き金を引いた。
あまりにもショックなニュースではあるが、当時のテープは全て回収され手に入れることは出来ないし、田舎で起きた事件だった為その出来事を知っている人は限られているようだ。
この、埋もれてしまった真実にスポットライトを当てることを目的に映画の制作は決定されたのだと思う。

そのクリスティーン役にケイトという女優に白羽の矢が立ったわけだが、彼女はまずクリスティーンの容姿に自分を近づけていこうとする。
肌を焼き、カラーコンタクトやカツラも作った。
次に彼女の内面についてだが、TV局の同僚や専門家、父親の部下だったという人物へ取材を重ねていく。
そこで、生前クリスティーンが何に悩み、何を求めていたのかを知り得ていくが、先に書いた通り、事件の瞬間をケイトが見ることは無かった。

ケイトの苦しみはクリスティーンについて深く足を踏み入れてから始まっていく。
彼女を理解しようと努力してもクリスティーンに近付けないのだ。
いや、努力しているはずなのに自分にはまだクリスティーンになりきれる力が足りないと絶望するのだ。

何度も同じシーンを撮り直し、遂には撮影中に共演者相手に喚き出す。
少しずつ自分を見失い、役に喰われていく女優を、カメラは自殺の場面でカットがかかるまで映し続けた。

カットがかかりラストにケイトが呟く捨てゼリフは、劇中に語られたであろうどんな言葉よりもクリスティーンの心情を代弁しているものだった。
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