こぅ

Mのこぅのレビュー・感想・評価

M(1951年製作の映画)
4.0
製作70周年記念

ジョセフ・ロージー監督による、【M】のリメイク、異色の
フィルム・ノワールで【サイコ・サスペンス】。

本来ならF・ラングの傑作とされる本家から鑑賞すべきなの
だが、リメイク版のこちらが手元にあった為、チョイス。
フリッツ版と同プロデューサーがベルリンから30年後のロス
に舞台を移して再プロデュースというのも唆られたポイント。

OPクレジット中の幼児に接する犯人を鏡を使って描写する
のがホラーの如き不気味。

主役は犯人。冒頭から面が割れている。

幼児殺害、事後のシークエンス(死体)は全く描かれないのも
特徴的。

【異色】というのは、単に【サイコパス】を扱ったというだけ
に留まらず、犯人を捜索するのが警察は勿論の事、犯人
(事件)をチャンスとばかりに利用しようとする【ギャ◯グ】
まで絡ませた脚本。

本作は、幼児(女児)連続殺人犯という猟奇的な題材であるし
、寧ろ当時より今の物騒になったご時世に、悪い意味でしっ
くりくるのかも知れない。

サイコパスのその元凶も、幼少期に遡り、虐待や育児放棄と
いうのもやはり普遍的。

我が国も例外では無く、本作で描かれている様な、話しかけ
ただけで犯人、或いは変質者扱いされる、終いには父親ですら
間違われる始末、、今の日本でも現状、幼き者に親切でも気軽
に接し難くなったと言えよう。

前半は、【静】で、警察による精神科医を起用した捜索、
犯人の住処の特定、、

きっかけとなる上手い伏線〜【動】となる犯人の行動〜
ワンシチュエーションの後半、丸40分自体が、【ラストまで
一気】のクライマックスと呼べる。
警察よりもギャ◯グの仕事っぷりがフューチャーされていて、
犯人が閉じ込められる事になる最上階の◯◯キ◯倉庫も異色。

◯判と言える展開、犯人の狂気的な犯行動機カミングアウト。

◯◯は絶対‼︎という点では、ヒッチ監督の【サイコ】にも
通ずる。

そして、【群衆】の恐ろしさも描いている。

アンリ監督の【密告】を想起したが、怖さは及ばない。

撮影は名カメラマン、アーネスト・ラズロで、計算された
長回しを多用、独特な階段のショットが印象的。
【陰影】としては本家F・ラング監督版に期待したい。


ラスト、意外にも凶弾に倒れたのは、、
「一番の悪はあんただ!」と捉えられそう。

本作は観る度に味が出てきそうなタイプ。


*地下室は、【ブレードランナー】にも登場するブラッド
ベリービル。
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