菩薩

Mの菩薩のレビュー・感想・評価

M(1951年製作の映画)
4.0
「正義」と「大義名分」を手にした群衆は如何に危うく容易く暴走するか、罪と罰、そして裁きの関係性。醜く罪にまみれた世界に放たれる汚れなき小鳥達、ならその前にその羽をもいでやるのも「正義」では無いのかとの犯人の慟哭の先に光る「右側に寄れ!」の注意書きが皮肉さを煽る。下が潰れれば上をも巻き込み崩壊する社会と言えどもその下ってのは幾らでも代わりがいる。疑心暗鬼に追われる民衆、根拠無き密告、振りかざされる他者への暴力性、規律なき集団が行き着く度を超えた私刑、身に覚えが無いとは言わせないぞお前ら、つか坂上忍よ…。正直Mと書かれたジャケット脱ぎなさいよ!とツッコミを入れたくなってしまうが、マネキン室での指先から血を流しての脱出工作にはこちらも息を飲む。浮浪者、精神病患者はいつの時代も犯罪者予備軍、偏見、欺瞞、本当に変わらんねぇ人間社会ってのは…とゆらゆら帝国「人間やめときな」を聴きながら一筆。階段、坂、エレベーター、高低差に痺れるぜ…。
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