すえ

暗い海上の白い波光のすえのレビュー・感想・評価

暗い海上の白い波光(1909年製作の映画)
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記録

これは素晴しすぎる、人物にも画面にも深い奥行きがある。流麗なショットの流れの中に、いくつかの強いショットを挿入している、その価値を理解している。

あまりに普通なんだけれども、その“普通”を作ったのがこの男だということを忘れてはいけない。

映画は自然、とりわけ水との親和性が高いことは初期の時点から発見されていたが、それがこの作品にも存分に生かされている。なぜ親和性が高いかについては確信的なことは言えないが、おそらく、映画という虚構の中における自然の動き(水の揺らめきなど)は、我々に確かな現実らしさ抱かせるからなのではないかと思う。我々がコントロールできない自然は、そのまま現実性として画面に出現する。仮に、映画に求めるものが非現実の中の本当らしさなのであるならば、映画における自然にこれほど心を動かされることにも得心がいく。

船を見送る女のショットと、ラスト・ショットは必見。映画が極限まで高まる感情に染まり、それを観た我々もその情感の波に呑まれてしまう。

2024,短編18本目 4/6
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