グラッデン

ぼくの名前はズッキーニのグラッデンのレビュー・感想・評価

ぼくの名前はズッキーニ(2016年製作の映画)
4.2
ひとりじゃない。

ストップモーションを駆使し、人形たちの指の動きや息づかいを緻密に表現した素晴らしいアニメーション作品でした。昨年日本公開された『KUBO/クボ 二本の弦の物語』もそうですが、こうした作品をスクリーンで観れて本当に良かったという気持ちでいっぱいです。

また、作品の絵作りに限らず、児童施設を舞台に子供の置かれた環境に焦点を当てながら、仲間たちとの交流を通じて、主人公の少年が心を開いていく物語の作りも非常に良かったです。

主人公・ズッキーニをはじめ、本作に登場する子供たちは、犯罪、ドラッグ、性的虐待、国外退去といった、両親にまつわるトラブルを受けて、心に傷を負っています。直接的な表現や説明だけでなく、人形たちのビジュアルや些細な行動からも窺えることができます。

こうしたハードな側面踏まえると、鑑賞前に抱いていた「アニメにすべき題材なのか」という疑問符は鑑賞を進める中で「アニメだからこそ伝えられる題材」なのだと思いました。さらに人形を使うことで、ある種の温もりを感じられることが作品のテーマにも非常に合致すると思いました。

アニメーションという枠組みに囚われずに考えれば、社会的な側面を切り取り、誇張することなく伝えていく作品の作りはフランス映画らしい側面だったと思います。ただし、シリアスにならず、ユーモアを忘れることなく、施設で暮らす子供たちの中に笑いと明るさも失うことなく描いていたのも良かったです。

胸が締め付けられることが何度もあります。だけど、ひとりでなければ、誰かが手を差し伸べてくれる。そうした思いを踏まえ、ズッキーニ君たちの明るい未来を強く願わずにはいられませんでした。