燕鷲

ぼくの名前はズッキーニの燕鷲のレビュー・感想・評価

ぼくの名前はズッキーニ(2016年製作の映画)
3.5
なんと愛くるしい。ストップモーション・アニメーションはこれほど豊かな表現力を持ち得るものなのか。

アナログ特有の温かみ、味わい深さは筆舌に尽くし難い。最新3D技術との融合、高水準の活劇性で魅せた『KUBO クボ 二本の弦の秘密』とはまた一味違う感動がある。
中でも喜怒哀楽の哀の描写が絶品で、野暮ったいセリフや大袈裟な演出に頼らず各キャラクターの“陰”を浮かび上がらせることに成功している。撮影部、照明部の貢献は大きい。
スイス、フランスの合作映画だけあって、思春期の性の目覚めにきちんと踏み込んでいるところも流石(ディズニー作品だとこうはいかないはず)。

惜しむらくはズッキーニとカミーユ以外の子供たちの処遇だ。
レイモンのような大人を何人も登場させるわけにはいかなかったのだろうが、それぞれにあれだけの過去を背負わせたのだから、もうちょっと丁寧にその落とし前をつけてもらいたかったと思う(特にシモンとアリス)。
あと一歩、ほんの少しで大傑作に成り得た好編、という印象。



荒井晴彦よ、アニメも捨てたもんじゃないぞ。
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