CHEBUNBUN

シモーヌ・バルベス、あるいは淑徳のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

4.5
【Les bizarres viens, mais une bise n’est pas venue...(変人は来れど、キッスは来ず)】
『KNIFE + HEART』が何故1979年のポルノ映画界、しかも女性の映画監督を主役にしたのか?それはマリー=クロード・トレユーがポルノ映画をテーマにした本作と重ね合わせる為だろう。

本作はポルノ映画に魅せかけて、ヌーヴェルヴァーグ的会話の魅力に満ち溢れた作品だ。またヌーヴェルヴァーグに、俗の極みを邂逅させることで、異次元の面白さを引き出すことに成功している。

本作は1時間の中で3部構成の会話劇が展開される。特に煌めくのは第1部。野郎どもの喘ぎ声が木霊する劇場。そこの受付は、ロビーに椅子と机を置いた簡素なもの。そこにアルバイトの女の子は、ジュースやパン、本に手遊びサイコロ並べて時が経つのを待つ。相方とダラダラ語る中、野郎が次々とやって来る。「早くチケット切れよ!」と言わんげに待つ客そっちのけで、会話に夢中になったり、「ねぇ、、、この映画興奮できるかなぁぐへへへ」と迫り来る変人達をなだめ、さっさとハコに流そうとする彼女たちの仕草を観ると映画館バイトしていたブンブンは懐かしさを覚えます。ああいう変な客いたなーと。

あれっ?蛭子能収のような客いなかった?

そんな楽しい楽しい第1部が終わると、次はレズビアンのショーパブに舞台が変わります。そこで働く友人を待つ主人公だが、中々彼女がやってこず痺れを切らすという内容。こちらは無軌道なライブシーン、『嗚呼!おんなたち 猥歌』さながらの熱いライブシーンにノックアウトします。そして第3部の、男と女の車内での駆け引きに味わい深い切なさを感じた。これは隠れた名作ですぞ!
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