ネズミツオ

アナベル 死霊人形の誕生のネズミツオのレビュー・感想・評価

アナベル 死霊人形の誕生(2017年製作の映画)
4.8
(※注意)ネタバレしています。

アナベル人形の表情に愛嬌があって怖くないのが薄気味悪さ倍増。人形を活かすも殺すも孤児院の子供たち。封印を解き、好奇心旺盛なリンダは大胆な行動に出る。白い布がフワリと立ち上がる。『ハロウィン』のオマージュである。我が子を失った悲しみから救いの手を求める為、悪魔と取り引きをしてしまった夫妻。人形に命を吹き込む職人が悪魔の母体を作ってしまうなんてこれほど救いようのない話はないのではないか。

そこにシスターと孤児たちを招き入れる。心の弱さ、理性を失った者に憑りつくのが「悪魔」。信仰心は全く役に立たず、いとも簡単に肉体が悲鳴を上げて崩れ落ちる。静寂さの中に、時折零れる明かりが子供達を優しく包み込む。照明演出が抜群に良いのも本シリーズの魅力。足の不自由なジャニスは病魔に打ち勝つ(それを受け入れなければ)黒い影に脅かされてしまうという子供にとってあまりに残酷で大きな試練が待ち受けているというのも素晴らしい描き方だった。

全編に渡って飛び上がり手に汗握るショック場面が多いのだけれど、一番心臓に来たのは肩ポンでしたわ(汗)子供たちが引っ越してくる最初のシーンで流れるザ・ハリウッド・フレイムズが1957年にリリースした(劇中はカバーヴァージョン)ドゥーワップ多用のR&B"Buzz Buzz Buzz"の選曲が良かったねー!アナベル(通称ビー※蜂)、歌詞は「ハチの羽音はブンブンブン、鳥のさえずりチュチュチュ…」まるでビーが獲物を歓迎するかのような歌に聞こえるじゃないですか。

納屋の案山子は13金のズタ袋ジェイソンだし、階段下の物置はシックスセンスを思わせる。極めつけにJホラーのアレが出て来てホラー映画ファンの頬をユルユルにしてから完全憑依されたジャニスの猛攻撃が始まる怒濤のクライマックス!もう少し話を削っても良かったと思うけど、相も変わらず美術が素晴らしい。リンダがアナベル人形に命中させるレトロな紐付きボール銃。木製グリップにリールが取り付けてある。どう考えても子供のおもちゃにしては高価そうでしたよね。これもスタッフが丹精込めて自作したんだろうなあ(笑)自ら暗がりに歩んでいくシーンで「やめろ!」と叫びたくなるけど、あれは闇の方から引っ張られているんだろうね。

そして過去作と繋がる『バック・トゥ・ザ・フューチャー』的な伏線の張り巡らせ方も実に見事。まさかああなるとは…。現時点では時代設定が一番古いので、本作から見始めても全然違和感ありません。悪魔本体が丸見えになるのがあまりに露骨すぎて『死霊館の人形』の時にガッカリしたんだけど、もうちょっとボンヤリさせてもいいと思うw

【2017年10月14日(土)】新宿ピカデリーで鑑賞。
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