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夜は短し歩けよ乙女のぐりのレビュー・感想・評価

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)
5.0
今までに観た映画の中で最も大好きな映画。おそらくこの先ずっと変わることのない、我が人生最高の1本です。

○はじめに
この作品と出会ったのは約1年半前。その頃はまだFilmarksを利用していなかったので、本作のレビューをいつシェアしようか、ベストなタイミングを待っていました。そしてようやく、ベストなタイミングが訪れました。今回はかなり、かなり長いレビューになっていますが、お時間があるときにぜひ、読んで貰えたら嬉しいです🍎

○最初に心奪われたのは湯浅政明監督の"トキメク"演出
映画を観ていると時々、冒頭だけで作品の好き嫌いがわかるときがあります。本作もそうでした。大抵の作品は、冒頭10~20分でなんとなくわかる感じなんですが、本作はなんと、開始1秒。黒髪の乙女が飲み物を一気にごくんと飲み干すシーンでの、喉が大きく膨らむ演出。初めて観たとき、びっくりして思わず一時停止したことを覚えています(笑)この何気ない演出に、私は一瞬にして心奪われたのです。そして、本作が"好き"だと直感したのです。もちろん、喉が大きく膨らむ演出以外にも、トキメキを感じる演出は沢山ありました。挙げていくと長くなるので割愛しますが、この"トキメク"演出というのは、湯浅政明監督の独創的で奇想天外な発想そのもの。湯浅政明監督ならではの"トキメク"演出が、本作を好きになったきっかけでした。

○初めて観たときの感想
ここで、初見時の感想を載せておきます。記録として書き残していた過去の私、ありがとうナ!以下、初見時の感想です。
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黒髪の乙女と先輩が過ごす一期一会の長くて短い一夜の物語🍎最っっ高、超超超好みの1本でした‼️奇想天外な展開で心が踊る感覚に💃🏻トキメキとの出会いで時間の流れの感じ方は変わってくるし、偶然のご縁を楽しもう精神の乙女が素敵で愛おしい😽💕深夜に観て大正解でした🙆🏻‍♀️制作陣の表現の豊かさに乾杯!🍻オーバーすぎる演出が大好きでした🎶お酒を嗜み、古本市を回り、みんなの風邪のお見舞いをして、乙女の一夜は終わる。なんて長い夜なんだろう!と時計を見たら2時間も経っていなくて、まさにタイトル通り🌃「君といると夜が伸びていくようだ」って言葉好きだな〜〜!パンツ総番長の登場シーンは笑いっぱなし!先輩と結ばれるのは夜明けなのがとっても良かった(^^)💕私もこんな一夜を京都で過ごしてみたくなりました🎖
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この頃の私、絵文字を多用するのが好きだったようですね(笑)改めて読み返すと我ながらわかる!!って感じのナイスな感想です(笑)特に好きな部分は、ほとんど過去の私が的確に書いてくれたので、このレビューでは、"作品の感想"とは少し違う感じで書いていきたいと思います。まァ、おそらく"作品の感想"も書くと思いますが…(なにせ初見時の感想が今の自分には短すぎるので…)温かい目で読んで貰えたら幸いです。

○何度でも観たいと思える映画
前述の通り、最初は本作の"トキメク"演出にドンピシャにハマりまして、一時期は毎日のように観ていました。案の定台詞はほとんど覚えまして、演劇「偏屈王」のシーンに関しては完璧に歌えます(笑)現在はたまに観る程度ですが、本作は何度観ても、全く見飽きることがありません。このように、"何度でも観たい"と思えるのはなぜなのでしょうか?レビューを書くにあたり、改めて考えてみました。

○森見登美彦先生から感じた"自分"と"理想"
もちろん、湯浅政明監督の演出に惚れたから、というのは言うまでもありません。それに加え、もうひとつ大きな理由がありました。それは、森見登美彦先生の描く物語、そして登場人物に、"自分"と"理想"を感じたから、です。これについて、さらに深く掘り下げていきたいと思います。

○自分と同じ誰かを探す旅
私にとって"映画を観ること"は、"自分と同じ誰かを探すこと"だと感じるときが時々あります。満たされない人間が、自分を満たしてくれる誰かを探している。自分を満たすのは自分であるべきなのかもしれないけれど、自分以外の、自分と似た誰かを探している。映画を観るという行為は、自分と同じ誰かを探す、一種の旅のようなものだと感じます。まァ、すべての映画に当てはまるわけではありませんが(ココ大事)。自分の好みの作品に出会ったときに、時々思うんです。お察しの通り、本作はその旅の途中で出会った"私のための映画"でした。

○登場人物に対する"憧れ"や"共感"を最も感じた作品
「森見登美彦先生の描く物語、そして登場人物に、"自分"と"理想"を感じたから」と前述しましたが、ここからは、特に"自分"と"理想"を感じた4人の登場人物について、詳しく書いていこうと思います。
①先輩
先輩は、本作で最も私に似た人物かなと思います。(例外として先に言っておくと、本は好きです。)例えば、先輩が黒髪の乙女を射止めるために行っていた"ナカメ(なるべく彼女の目にとまる)作戦"は、よく考えてみたら過去に自分も同じようなことをしていたな〜と(笑)自分もどちらかといえば外堀から埋めるタイプというか…とりあえず相手の視界に入るようにして、相手からのアクションを待っていたというか…(恥ずかしいので割愛)あと、これも恥ずかしい話ですが、"小さなことからコツコツと"ができない(努力できない)というのも一緒でした(笑)
②東堂さん
「こうして通りすがりの人と楽しい時間を過ごす、これが俺の幸せなんだ。」黒髪の乙女とカクテルを嗜むシーンで東堂さんが言ったこの言葉、最初はこの言葉に感銘を受ける黒髪の乙女の表情が好きだと思っていたんですが、よく考えたら私は、この言葉も好きなのだと気づきました。この言葉からわかる東堂さんの"人生観"に、私はとても共感したのです。これについては、後述にて詳しく書いていきます。
③パンツ総番長
パンツ総番長に共感したのは、黒髪の乙女に「リンゴの君との出会い」を語ったシーンでわかる、彼の"恋愛観"でした。2人の頭でリンゴが同時に跳ねた瞬間、運命を感じた(恋に落ちた)。そして、ただもう一度顔を見て、声をかけたいと思った。ロマンチック主義者とも言える彼のこの恋愛観、大好きです。(ちなみに、パンツ総番長の話を聞いたあとの黒髪の乙女の表情、私が本作で最も好きな表情です…)
④黒髪の乙女
黒髪の乙女の"長くて短い不思議な一夜の歩み"は、私の最も理想とする"人生の歩み"そのものでした。無手勝流にお酒を飲みたいと歩き出した黒髪の乙女は、長くて短い不思議な一夜の中で、様々な人と出会い、繋がっていきます。まず単純に、オモチロイことに無我夢中な黒髪の乙女に憧れを感じた、というのがひとつ。私は割と1人で行動するのが好きなんですが、冒険するのは苦手で。この映画を観る度に、私は黒髪の乙女のようにもっとオモチロイことに貪欲でいたいなと感じます。そしてもうひとつ。黒髪の乙女が一夜の中で得た"一期一会の出会い"に、私はとても憧れを感じるのです。東堂さんも黒髪の乙女も、偶然出会った人と共有する時間を純粋に楽しんでいました。黒髪の乙女は、この"一期一会の出会い"を"何かのご縁"や"運命の導き"などと表現しています。素敵ですよね。偶然の出会いを"何かのご縁"として、その場限りの時間を一緒に楽しむ。これこそが、人生の醍醐味だと私は思います。加えて、コレは私の勝手な解釈なんですが、登場人物の"名前"に、黒髪の乙女が"一期一会の出会い"をとても大切にしているということが表れているような気がします。"一期一会の出会い"とは、言葉通り1度きりの出会い。2度と出会うことはないかもしれない出会い。それでも、黒髪の乙女だけは、出会った人たちみんなの名前をちゃんと覚えています。黒髪の乙女と出会った人たちにとって、彼女は彼女、黒髪の乙女は黒髪の乙女です。名前を覚える程度の関係性ではないことは知っています。もちろん私自身、その不思議な距離感の関係性に憧れを持っていることは事実です。ですが、黒髪の乙女はしっかりと覚えています。黒髪の乙女のそういうところが、私はたまらなく大好きなのです。あ、ちなみに、先輩のことを先輩と呼んでいる(同様に先輩が彼女のことを彼女と呼んでいる)のには、違う意味が含まれていると思いますが😉その他、東堂さんの人生観やパンツ総番長の恋愛観、そして樋口式飛行術(笑)に感銘を受ける黒髪の乙女、大好きです。
⑤黒髪の乙女と先輩(オマケ)
ラストシーン、黒髪の乙女がカフェに向かい、先輩がカフェで待っているシーン。2人は会う前に、どんな会話をしようか考えていました。そこで思いついた会話の糸口が、"あの不思議な一夜を彼女(先輩)はどんな風に過ごしたのか"でしたね。この"相手(の過ごした時間)を知りたい"と思っている2人がたまらなく大好きでした。これについても後述で詳しく…(?)

○これでも厳選したつもりです
さて、おそらくここで折り返しです。ここまで読んでくださった皆様本当にありがとうございます。一旦休憩がてら(?)好きなところを箇条書きします。ここは自分の記録用なので飛ばしてもらって構いません。一度休憩して、この先も読んでいただけたら嬉しいです。
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・黒髪の乙女の細かい表情の変化
・センスのある言葉の言い回し
・宝石のようにキラキラ輝くカクテル
・癖が強い「詭弁踊り」を真剣にやる乙女
・「そこにお酒のある限り!」
・李白さんのグラスで偽電気ブランを飲む羽貫さん(風邪の伏線)
・学園祭事務局という名の秘密情報機関のモニターに映る「四畳半神話大系」の彼ら
・スペシャルゲスト小津(似の古本市の神様)
・氷こたつ
・癖強すぎる闇の売りたて会での一悶着
・韋駄天こたつとだるまと「偏屈王」の繋がり
・「ご都合主義万歳!なむなむ」
・黒髪の乙女が着たプリンセスだるまの衣装
・最も大好きなシーン、演劇「偏屈王」の最終幕(強烈なインパクトのパンツ総番長、躍り出る先輩、再び主役に躍り出るパンツ総番長、リンゴの君と運命の再会、リンゴの君の正体、激アツな紀子さんの告白、運命を貫くパンツ総番長、結ばれかけるパンツ総番長と学園祭事務局長、突然の竜巻、2人の頭で同時に跳ねた鯉、そして、新たな運命の恋、怒涛の展開に心が踊った)
・みんなから上着や帽子を素直に頂く乙女
・風邪のお見舞いにて、ナイスアシストをしてくれた学園祭事務局長
・「李白さんから始まったご縁は、皆さんを否応なく繋いでいます。李白さんは、孤独ではありません。今宵は、李白さんがくださった、素敵で長い一夜です。」
・ありがとうの言葉と共に巻き戻る時間、そして若返る李白さん(大好き)
・夜明けと共に結ばれる2人(最高)
・「私も、風邪引いたかもしれません」(最高)
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○ベストなタイミング?
冒頭に、"ベストなタイミングが訪れました"と書きました。皆様気になっていたことでしょう。ここで答え合わせです。ベストなタイミングというのも、実は先日、ご縁の糸に導かれ、初めて映画館で本作を観る機会に恵まれまして。初めて映画館で観たということで、これはベストなタイミングだろうと思い、今回レビューを書くに至ったというわけです。ここからは、そのときの話について書いていこうと思います。

○初めて映画館で観れて幸せでした
本当は今年の夏、京都に一人旅をするつもりでした。しかし、上手く予定が合わず、余裕もなく、泣く泣く断念。そんなとき、「四畳半タイムマシンブルース」の公開記念として「夜は短し歩けよ乙女」が立川シネマシティにて再上映されることを知りました。この夏京都に行けなかった悔しさもあり、黒髪の乙女に会いに勢いで1泊2日の弾丸東京旅に行くことを決め、9月末に1人で行ってきました🫶🏻ここで一旦、初めて映画館で観た「夜は短し歩けよ乙女」の感想(内容について触れてる部分はカットして、映画館で観れたことの感想のみ)を載せておきます。
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幸せでした。まるで黒髪の乙女が初めて偽電気ブランを飲んだときのような、幸福が全身に染み渡っていく感覚でした。好きなところを語り出すとキリがないくらい、文字通り全部、大好きでした。もう既にテレビやスマホで何度も観た映画でしたが、映画館で観る「夜は短し歩けよ乙女」は格別で、観てて楽しかったです。こだわりの演出や、大好きな登場人物たちを大画面で見れたことも嬉しかったです。
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いや〜、凄く幸せでした。鑑賞後の自分を動画に撮っていたんですが、我ながらめちゃくちゃ幸せそうでしたね(笑)本当に映画館で観れて良かったです。

○ご縁の糸に導かれた東京旅
この東京旅は、最初はただ"黒髪の乙女に会うこと"だけが目的でした。しかし、偶然のご縁が重なって、結果的に、大好きなお友達と久しぶりに会えて、池袋PARCOでやっていた「四畳半タイムマシンブルース展」に行けて、柏のキネマ旬報シアターで再上映していた「グレイテスト・ショーマン」を観れて…🥺💞歩いてみないとご縁には出会えない。まさに"夜(人生)は短し歩けよ乙女"ですよね。無手勝流にお酒を飲もうと歩き出した黒髪の乙女が素敵な一夜を過ごしたように、私も黒髪の乙女のおかげで素敵な旅を過ごすことができました🫶🏻

○実は…
長い長いレビューも、ようやく終わりを迎えます。ここまで読んでくださった皆様には、私が本作をいかに愛しているか、いかに本作が私にとって最高の1本なのか、わかっていただけたかと思います。ちなみに、ここで衝撃の事実を伝えると、実は私、原作は未読なんです(笑)原作はこのレビューを書く前に絶対読もうと決めていたんですが、原作もおそらく絶対大好きなので、作品に完全に没頭できるタイミングをずっと待っていまして…(笑)ハイ、できれば今年中に読みたいと思います(笑)話は変わりまして、最後に、"感想をシェアすること"について、私が伝えたいことを書いて終わりにしようと思います。

○知らない誰かに自分を知ってもらいたい
最初の方に、私にとって"映画を観ること"、つまり"映画をインプットすること"は、時に"自分と同じ誰かを探すため"であると書きました。では、"映画をアウトプットすること"、つまり"感想をシェアすること"は?私は"自分を知ってもらうため"なのではないかなと考えました。…というか、私がそうなのかもしれませんね。まァ、これについてもすべての映画に当てはまるわけではありませんが(ココ大事)。私は、映画の感想の中に、自分の話を含ませるのが好きなんです。自分の話を含ませることで、映画の感想と一緒に自分のことも知ってもらえるから…なんて、かなり恥ずかしいこと言ってますが。もちろん、誰かの自分の話を含んだ感想も大好きです。このことは、黒髪の乙女と先輩の"相手(の過ごした時間)を知りたい"気持ちと通じるものがあると感じていて、私の場合は、相手の過去の話というより、相手の価値観や人生観を知りたいと思う気持ちが強いです。逆に、自分の価値観や人生観を知ってもらいたい気持ちも強いですが(笑)でも、日常会話であまりそういう話はしませんよね。そういうこともあって、私はいわゆる"自分語り"な感想を時々書いてしまうのかもしれません。映画を観て、Filmarksで感想をシェアすることで、知らない誰かに自分を知ってもらう。反対に、知らない誰かを知る。これもある意味"一期一会の出会い"なのかもしれませんが、それだけで私は、十分満たされるのです。

○終わりに
ここまで読んでくださった皆様には本当に本当に感謝しています。6000文字以上頑張って書いた時間が報われました。(小声で言っておくと、コメントいただけたらめちゃくちゃ喜びます。)大好きな映画の感想から自分と映画についての想いまで、書きたいことほぼすべて書けたので(遺書にしたいレベルで)大満足です。これからも私は沢山の映画に出会っていくと思いますが、本作はこれまでもこれからも、私にとって特別な1本として、私の人生にずっと寄り添ってくれることでしょう。改めて「夜は短し歩けよ乙女」大好きです!!ありがとうございました!!

📝Blu-ray特装版(初回生産限定)購入日 2021年8月26日
️📝初めて映画館で観た日 2022年9月23日
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