いのしん

夜は短し歩けよ乙女のいのしんのレビュー・感想・評価

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)
3.2
初見では世界観が強すぎて話が分からず、ついていけなかったので、二度視聴。黒髪の乙女が可愛い、なのにめちゃくちゃお酒を飲むというギャップに萌えるというのと、中盤の学園祭の「偏屈王」というミュージカル風演劇のシーンが長かった印象。
「こうして出会ったのも何かのご縁」って良い言葉。この言葉で締めくくられるように、本作は人と人や、人と本との出会いをテーマに描かれているのだろう。黒髪の乙女が先斗町で飲み歩いた先で出会った東堂、樋口、李白といった人たち、黒髪の乙女が知らないところで、また彼らと関わり合っていた先輩。作中で黒髪の乙女が李白に言っていたように、みんな実はどこかで繋がっていて、貸したお金や他人への親切は、巡り巡って自分のところに返ってくる。誰しも「一人ではない」のだ。そんな「繋がり」や「関わり合い」に思いを馳せることができる作品。
黒髪の乙女と良い関係を築きたい、そのために焦らず外堀を埋めるように計画を実行してきた先輩。何かと彼女の目に留まるように、結婚式の1次会で、古本市で、学園祭でいろいろと手を考える。そんな彼の心の中の想いが独り言のようにナレーションされるのは心地が良い。しかし、いざ彼女が風邪で寝込んだ自分の元へ看病しに来ると知れば怖気付いてしまうという始末。片思いを経験したことがある人ならば誰しもが共感できるであろう。
物語は先斗町での飲み歩き・黒髪の乙女と李白の酒飲み対決から、古本市での「ラ・タ・タ・タム」探し、学園祭の偏屈王の取り締まり、京都一帯の風邪の流行と、季節が春から夏・秋を経て冬へと移り変わるように描かれる。が、これは四季が移り変わったような長い一夜の話なのだと、終盤で李白と会話する黒髪の乙女の口から発せられる。流石に一夜なんてことはないだろう、と突っ込みたくなるのだが、これも若い黒髪の乙女にとっては一夜と感じ、年寄りの李白にとっては数十年という長さに感じるということか。序盤でも描かれたように、年齢によって流れる時の速さは違うのかもしれない。
夏の京都、鴨川良いな。デートスポットとして情景が浮かぶ。