笹井ヨシキ

怪盗グルーのミニオン大脱走の笹井ヨシキのネタバレレビュー・内容・結末

2.8

このレビューはネタバレを含みます

イルミネーション・スタジオ最新作ということで、チビっ子いっぱいの劇場で鑑賞して参りました。

今や飛ぶ鳥を落とす勢いのあるイルミネーション・スタジオのキラーコンテンツであるミニオンが登場する怪盗グルーシリーズですが、続編が作られる毎に話は大味になり映画的魅力というよりは映像作品的愉快さを押し出すことに普請しており、今作もそれに拍車がかかっている印象の作品でした。

とりあえず言えるのは話の欠点はたくさんあるということですw

今作は「SING/シング」のように複数のエピソードを同時並行で進める群像劇のスタイルを取っていて
① グルーとドルーの再会
② ルーシーが理想の母親を目指す
③ アグネスが本物のユニコーンに思いを馳せる
④ ミニオンたちが新たなボスを求める
⑤ 自分を見捨てたバルタザールの世間への恨み節と懐古
という5つを同時並行で見せていく構成となっています。

これ自体は悪いとは言わないですが、「SING/シング」のように最終的に同じ目的を目指しラストに集約していくのでもなく、各々の話が不可欠の要素として補完し結びついているわけでもないので、とても散漫でごちゃついており映画的カタルシスはほとんどない作品になってしまっています。

これはシリーズを重ねるにつれキャラも増えミニオンのキャラクター性も増長した結果、統一感のある話を考えることが困難になったため、他愛もない(またはやりたいだけの)話をパッチワークして一本に纏めざるを得なかったのかなと思いました。

特に④のミニオンたちのエピソードは、あれだけ切り取って一本で観た場合「家出してドタバタして突然グルーのこと思い出して帰ってきただけ」というあまりにも他愛もないどうでもいい話で、「いくらミニオンでもこれでいいのか?」と不安になるくらいの成立してなさでした。

また怪盗グルーシリーズにしては珍しく「理想」というテーマが設けられており、これ自体はとても良いと思うのですが、5つのエピソードで落としどころがバラバラなのも問題なのかなと。

③のエピソードの終盤で、片方の角が折れたヤギのラッキーをユニコーンだと信じるアグネスに対してグルーが「ユニコーンを探していてもヤギが見つかってしまうことがある」とリアリストさながら現実を突きつける場面がありますよね。
でもアグネスは「ラッキーはヤギかもしれないけど一番最高のヤギなんだよ」とアンサーします。

このシーンって、
(理想(ユニコーン)を追うのはもちろん大事だけどその過程で見つかるモノ(ヤギ)こそ素晴らしいモノかもしれない。それを見逃し理想に固執しすぎてバルタザールのようになってはいけない。)
というメッセージをアグネスの純真さが示している素晴らしいシーンだと思うんですよ。

だからすごい関心して観ていると、①と④では最終的にドルーやミニオンはそのまま理想を追い求め続け自己実現のようなものを果たしてしまうんですよね。

一方では理想を追い求める過程で見つかるものの大事さの話をして、一方では理想を追い続ける話をしている。どっちだよと。
まるっきり矛盾しているとは言いませんが、せっかく設けたテーマの着地としては軸足がブレすぎてる感じがして何か釈然としないんですよね。

話運びとしてもテーマとしても5つのエピソードを上手くさばき切れていない感じがノイズになっていることは否めず、相変わらずだなーと思ってしまいました。

とまあ色々文句を言いましたが、マイナス点を考慮しても作品全体の評価としてはそんなに悪くないです。

そもそもウェルメイドなもののカウンターとして存在するイルミネーションの作品に理屈っぽい短所をあげつらうのもお門違いだし、良くも悪くもいつものイルミネーションだなぁと思って観てました。

先述した映像作品的愉快さという観点でいうと相変わらず高クオリティで、特にバルタザールは「マグノリア」のウィリアム・H・メイシーをポップにしたようなキャラクターで味わい深かったし、ロマンの詰まった巨大ロボ市内破壊シーンや80年代的センスも刺さるところではないでしょうか。

ミニオンたちも出てくるたびにチビっ子たちが歓声を上げるので微笑ましく、何か色々雑だと思うけどみんな楽しんでるし良いかと思えましたw

恐らく続編はまだまだ作られていくと思うので、次回作も文句言いながら何だかんだ楽しみたいと思いますw
(マーゴとイディスももうちょっと出番あげてw)
笹井ヨシキ

笹井ヨシキ