つばさる

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのつばさるのレビュー・感想・評価

4.4
フィギュアスケート界において史上最大のスキャンダルとなったトーニャ・ハーディングの元夫と友人による「ナンシー・ケリガン襲撃事件」の真相を関係者のインタビューを基に描いた伝記的ドラマです。

ストーリー ★★★★☆
(真相を複数人の証言として表現)
キャラクター★★★★★
(強烈な個性がぶつかり合う)
オシャレ度 ★★★★☆
(カメラワークがシャレてます)
エンタメ度 ★★★★☆
(インタビュー形式やカメラ目線を取り入れドキュメンタリー風の構成が面白く、全体がコメディタッチで飽きない)
メッセージ性★★★★★
(親は選べない。せめて夫と友人は選ぼうか)

「fu○k」が口癖でヘビースモーカー、再再再再再婚…と、結婚と離婚を繰り返す常識に収まらない母の元、3歳からスケートだけをして充分な教育も受けられず、虐待を受けてきたトーニャ。

15歳の時に出会った初めての彼ジェフは、最初の3ヶ月は優しかったけれど、次第に暴力を振るうように。
しかし幼い頃から母の暴力が当たり前にあったトーニャは暴力を受けるのは自分が悪いからだと思ってしまう。
母から逃げるように家出し、ジェフと同棲を始め、そのまま結婚。そこから彼女の転落人生が始まる。

トーニャ・ハーディングをハーレクインでおなじみのマーゴット・ロビーが演じ、スケートのシーンは猛特訓をして実際に滑り撮影したと言うから驚き(๑*౪*๑)
しかもマーゴット・ロビーはプロデューサーも兼ねてます。この作品への思い入れがすごい。

そしてトーニャの母がほんとに強烈!スケートリンクで禁煙を指摘されてもタバコを吸い続け、ほかの母親達には暴言を吐く。周りの事などお構い無しの正真正銘のモンスターペアレント!
(母ラヴォナを演じたアリソン・ジャネイはアカデミー賞助演女優賞を受賞。エンディングで本人登場するけど激似です!)

私はこの映画に登場する人達は、ある意味で皆貧しい弱者だと思いました。

文字通り金銭的に貧しく、また愛にも教育にも恵まれないトーニャ。フィギュアの衣装を買うお金は無いので自分で縫っていたのが涙ぐましい。

娘にやりたい事(スケート)をさせ収入のほとんどを費やすけれど、上手く愛情表現が出来ず暴力を振るってしまう母ラヴォナ。

トーニャに接近禁止令まで出させてしまう暴力夫ジェフは友人にも恵まれない。
ジェフの唯一の友人は現実を直視できず妄想に取り憑かれているショーン。

無知な実行犯は依頼されるがままナンシーを襲撃。

皆無知で不器用で正しい道を歩めない。

この映画の中心となるテーマは襲撃事件の真相です。
でも本当のところ、真偽って当事者しかわからないですよね。その当事者に意見の食い違いがある場合、誰が真実を語っているのかわかりません。
だからこの映画では当事者のインタビューと回想によって構成され、話が食い違う部分も描く事で観た人に判断を委ねているんだと思います。

当事者を誰一人として好きにはなれないけど、共感出来ない事もない。些細なボタンのかけ違いから徐々に取り返しのつかない方向へ進んでしまうような事は誰にでも起こりうることだなと。

まず私なら暴力を振るうような男を選ばないけれど、もし自分がトーニャのような環境に生まれ育っていたら、そう断言出来ないかもしれない。

トーニャが度々口にする「私は悪くない」というセリフや
劇中使われる「自業自得」というワードが考えさせられました。(本当に悪く無いのかどうかは別にして)

映画自体は割とコミカルに描かれていて、エンタメとしても良作だと思います。

ただ暴力シーンがかなり痛い。スケートシーンは演技もカメラワークもすごいんだけど結構目が回りますのでご注意を(笑)

ちなみに事件当時小学生だった私は事件のことは全く覚えてませんでしたが、映画として充分楽しめました(^o^)

実際のトーニャ本人誰かに似てるなと思ってたら、エイミー・アダムスだ!(笑)

2018年劇場鑑賞14本目
つばさる

つばさる