しんご

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのしんごのレビュー・感想・評価

3.8
アメリカ人史上初のトリプルアクセルを成功させたフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの成功と転落を描いた作品。

ドキュメンタリー形式の映画は好みが別れるけど、本作は思っていた以上にコメディ寄りでかなり楽しめた。事件自体を茶化して自嘲しているような作りはライトで、回想の中でも登場人物が観客に語りかけるメタ視点のおかげでストーリーの追いやすさとメリハリが抜群に良い。

「スーサイド・スクワッド」(16)のハーレー・クインでお馴染みのマーゴット・ロビーが30代にして10代のトーニャから演じる違和感も途中から気にならなくなった。劇中何回使用されたか分からない「fuck」を連発するトーニャのやさぐれ感と純粋に愛されたい少女のような二面性をロビーが見事に表現。幼少から言い続けた「私は悪くない。」は波瀾万丈な彼女の半生を象徴するフレーズだ。

...からの、スケートシーンの迫力には興奮しきり。フィギュアとミスマッチなロックナンバー「Sleeping Bag」(ZZ Top)をBGMにリンクを縦横無尽に滑走するロビーが格好良すぎる。ボディダブルは勿論使っているんだろうけどどこまで本人が滑っているんだろう?ちなみに、実際のトーニャも「バットマン」(89)のテーマをバックに滑ったりしているんだね。この本人映像もめちゃくちゃ格好良いです。

そんなトーニャより遥かに壮絶なのが彼女の母親ラヴォナを演じたアリソン・ジャネイ。「ノーカントリー」(07)の殺人鬼アントン・シガーを彷彿させる不気味なオカッパ頭。丸メガネの奥にある始終苛立った目は本編で一切笑うことがない。「自分はあんたの人生に全てを賭けてるのよ」の名目で罵詈雑言・モラハラ・DVは当たり前、挙げ句金のために娘を平気でマスコミに売ろうとする鬼畜さが最初から最後までブレなさすぎて逆に清々しい。「ジュノ」(07)で見せた心優しい継母の面影を微塵も感じさせない芝居はさすがプロ、の一言に尽きる。

実際のドキュメンタリー映像が挟み込まれる遊び心的演出にもニヤリ。ショーン本人が本当にあんなこと言ってて笑った。あのバカキャラ個人的には好きだったな。さらに、旦那の再婚相手の名前にはもっと笑った。

事実は本当に小説より奇なり、な作品。
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