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アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのCookieMonsterのレビュー・感想・評価

3.5
実在のスケーター、トーニャ・ハーディングのスキャンダルを軸にした自伝的作品

この作品の美点は、映画化の為に事実を歪曲して肉付けした物語を語るのではなく、実際のインタビューを元に再構成された、かなりリアリティのある物語だから
映画化の度に行われる肉付けは贅肉に成り下がることが多いが、この作品ではそれが少ない

この作品にはハリウッドにありがちな救いがない
彼女はまして英雄でもない
フィギュアしかなかった少女が成長し、フィギュアを武器に戦い続ける記録
そして彼女は愛されることがない
母の愛を求めて始めたフィギュア
初めての男も彼女に暴力を振るい、母親も夫も彼女を陥れた
フィギュアファンも、彼女の技術ではなく、キャラクターを判断して彼女を嫌った
これだけしかない、とフィギュアに賭けるほど、出ない結果に空回り、審判に罵声を浴びせれば更に孤立していく悪循環
フィギュアをやめたいと思った少女は行き場を失ってフィギュアにすがって涙をみせるシーンには心を動かされる何かがある

トーニャはファイターだ
ラストシーンまで彼女は戦い続ける
母親や夫、フィギュアの審査員、フィギュアそれ自体に対して
ラストシーンのリングの上に溢れた赤い血は象徴的で、彼女は傷つきながら諦めることを知らない
そしてそのすべては愛されるための承認欲求が動機だとすれば、ブラックユーモアで包んでいるこの作品の本質はとてつもなく悲劇だし、その悲しみをマーゴット・ロビーはうまく表現したと思う

ちなみにスケーティングのシーンはダレン・アロノフスキーのブラック・スワンでも用いられたCGと代役の組み合わせ技だと思うけど、背景が観客席なので結構浮いてしまったし、そもそもそこまで競技シーンをアップで写すべきかどうかは是非もありそう
ファイターとしてのトーニャという意味では必要?
どうだろう
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