ちぇりー

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのちぇりーのレビュー・感想・評価

3.7
公開当初、本作はバッシングを受けたらしい。実在するトーニャを被害者風に描写したのが多くの人の反感を買ったそうだ。
思うに、戦犯はトーニャ演じたマーゴット・ロビーにあるのでは。演技が(特に終盤)上手すぎて同情しかけた。これはいけない。笑

本作はノンフィクションながらコミカルに描かれており、作中に登場人物たちがバリッバリのカメラ目線で語るナレーション方式は結構好きだったりする。
1994年に主催されたリヘハンメル五輪で起きた問題の「トーニャ・ハンディング事件」の実際の動画を見てみたら、一部始終まで見事に再現されており、単なるコメディ映画ではない、とハッとさせられる。
 
フィギュアスケート界は其々の選手のスケート能力を純粋にジャッジを下すのかと思いきや、プライベート面でも採点に入れるとは…。反則技バク転を決めたスルヤ・ボナリー選手の人種差別問題が頭を過ぎりました。

ラスト。
彼女は虚言癖があるという証言もあり、どこからどこまでが事実なのかは結局本人と神のみぞ知る、になっちゃうのだけど。
1991年の全米フィギュアスケートにて水色の手作り衣装を身に纏い、初めてトリプルアクセルに成功した時のトーニャが嬉しさを隠しきれなくて、演技中に思わずガッツポーズを決める無邪気な姿を見て。彼女は少なくともフィギュアスケートを愛していて、フィギュアスケート選手として必死に生きたのだろうな、と思った。そう信じたい。

そんな彼女がフィギュアスケートへの道を絶たれた末のボクシングに転身。
相手に殴られて跳ばされるシーンと、初めてトリプルアクセルを決めた栄光の過去のシーンを重ねるのは卑怯な演出だし、切なくなる。


米国の貧困層は洒落にならないレベルで、生きるのに過酷な世界だなと改めて痛感させられた次第。アメリカに謎の幻想を見ている勘違いどもに是非、見せてやりたい(性格悪