torakoa

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのtorakoaのレビュー・感想・評価

3.7
実話ベース。五輪出場したくてライバルを襲撃し怪我させた、という昭和の少女漫画か何かみたいな事件がかつてあった。ヒールの名はトーニャ・ハーディング。女子プロレスラーみたいな衣装ひでえなと思ってたら、後にスケート界を追われホントにレスラーに転向してたらしい、見るからにヒールな人。襲撃されたナンシー・ケリガンは五輪メダリスト。『俺たちフィギュアスケーター』に出てたっけ。

フィギュアスケート競技好きなので事件と名前と顔は知ってて、動画サイトで競技映像も見たことある。雑な演技で苦手なタイプの選手だし、競技イメージを悪化させた人として勿論嫌いだったので、映画で美化されたり言い訳されたりするの嫌だなーと思っていた。
あ、こういう人の実話ベースでコメディてアリなんだ。てのが結構画期的に思った。テイスト的に後の『バイス』と近いかも。昭和のスポ根漫画みたいな特訓とか笑った。「バカしか登場しない物語」とか劇中で言われてて、まあその通り。

競技映像はまあ不自然ながら、さすがに『俺たちフィギュアスケーター』よりはだいぶいい。ちょっとそれっぽいと思うとこあったけど。競技経験者でなければできないとこは顔をCGですげ替えてる模様。トリプルアクセルは加工してるはず。跳べる女子は希少なので。

努力でどうにかできるものでもない身体能力というのは確実にあり、ジャンプの高さを見るに彼女に才能はあっただろう。ただそれだけが突出してたとしても上位になれない競技なので、今の採点なら何が足りなくて評価されなかったかコーチも本人もわかるだろうし、そこまでやさぐれなかったんじゃないかなー。ケリガンが邪魔だとか思う前にやめてた可能性もある。

コーチがあんぽんたんな感じになってたが、あくまでハーディングの記憶を元にした言い分だし、取捨選択の際に面白いとこをピックアップするのは当然だろうから、言われて理不尽に感じたことだけ憶えてる、またはピックアップされただけで、コーチがあんぽんたんだった訳でもない可能性もある。かなー。誰でも手軽に動画を撮影できたり動画サイトなどで簡単に映像見れる今と違って、自分の演技を客観視したり他選手と比較したりするのが難しかったのもあると思うけど。

全米選手権一発勝負で代表決めてたアメリカは、近年2シーズンの成績から総合的に選考するようになっている。アメリカンドリームを夢見れそうな一発勝負は有力選手達がバタバタと失敗して沈む可能性があり、いつぞやの五輪ショートトラックでオーストラリア選手が優勝したみたいなことになりかねず、世界選手権に有力選手を送り込めないと翌年の出場枠などに影響を及ぼすので選考基準変えたらしい。

レビュー眺めてたら「正当に評価されなくて可哀想」という感想が多くて結構衝撃だった。
まー彼女の言い分としてはそうなんだろうけど、正当以上の評価されてたと思うなー。多分当時必殺技扱いだったトリプルアクセルで、かなり下駄履かせて貰ってる感。「質」の問題に気づけてない選手の意見・捉え方でしかない。
一つ一つ磨いて総合力を高めることなく、必殺技一発に賭けたハーディング、って感じだと思う。

伊藤みどりと見比べでもしたらハーディングの雑さがわかると思うよー。すべてにおいて伊藤みどりが圧倒的にクオリティ高い。彼女はトリプルアクセル抜きでも世界トップレベルだが、ハーディングはそうではない。
torakoa

torakoa