ピンピンピン

我が闘争 若き日のアドルフ・ヒトラーのピンピンピンのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

端的に言うとイケメンを見る映画

史実ではなく戯曲をもとにした作品だそうで、ヒトラーが権力を持つ前の画家の頃の様子が描かれています
権力を得る前の話なので戦車も軍服も出てこないし、派手な演出は皆無
しかし超絶イケメン俳優のトム・シリングさんが演じる線の細い神経質そうな美形が徐々に狂っていく様子は圧巻でした
戦争映画を好む方よりも人間が狂っていく様子がどんな感じなのか、狂う場合周りに何が必要なのか?に興味がある方に向くと思います


ここからプチネタバレ


家賃を払うのも難しいくらいのヒトラーを息子の様に可愛がるユダヤ人のお爺さん
若くて未熟で万能感と現実のギャップに苦しむ若きヒトラーを宥めたり、励ましたり、時に厳しく接したり…
ヒトラーを知る人があいつは変だぞ!と言っても優しく接し続けあのラストだと思うと胸が痛みます
ヒトラーは本当に未熟で万能感だけあるごく普通の青年でした

最初から最後までヒトラーの言動はおかしいというか、未熟という言葉では無理があるぞ???という行動をとっているのですが、狂う方向に覚醒してから本当に圧巻でした
ただの口だけで行動が伴わない青年が人の心を掌握する演説の仕方・身振り手振りを習得し、数は少ないものの隊を組み部下に家探しさせたりするシーンにはもう未熟で万能感しか無い青年はいません
狂うか狂わないかギリギリの境界線の向こう側にもう行ってしまった後の姿です

私はこの映画は別の俳優さんが演じていたらおそらく最後まで見なかったと思います
何故ならば、狂気の覚醒シーンまでヒトラーがただの嫌な奴でユダヤ人のお爺さん達に酷い言動をするだけでもリタイヤしておかしくない程度に生意気な青年でした
しかし、冒頭にも書きましたが線の細い神経質そうな超絶美形俳優が徐々に狂っていく様子から目が離せないほどに良い演技で惹きつけられました

そしてラストが本当に絶望的で、創作とはいえ神様はこの世にいないのか?と悲しくなりました
ユダヤ人のお爺さんの気持ちを考えたら複雑な気持ちになるというより、絶望しか目の前に横たわっていないだろうなと…