ちょげみ

犬ヶ島のちょげみのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.9
外国人から見た日本と日本人から見た日本というのは当然のことながら全く違う。

よくハリウッド映画の一幕で日本の風景だったり生活だったりを描かれることが多いが(ここ数年の映画の中で印象的だったのは「ブレッドトレイン」や「ジョン・ウィック」)その大部分は私たち日本人から見たら違和感ありまくりだったりする。

その理由の中で最も可能性が高いのはおそらく、日本のことをよく知らない方が自分が抱いているイメージだけで日本的風景を作り出しているからだろう。
そして、それに次ぐ第二の理由として挙げられるのは、日本の風景や生活の中には、私たちが言語化することができる一目瞭然な特徴と、私たちが意識することはできないけど確固として日本的生活の根幹をなしている特徴というのがある。
だが、違う文化圏で育った外国の方は後者の機微というのが体に染み込んでいないため作品の中に投影することができない。
よって、彼らが描く日本は私たちのセンサーに引っかかって、名状し難い違和感に繋がってしまうのではないだろうか。


と、このように日本をいかにも日本らしく描くことは外国人作家たちには難易度の高いミッションなのかもしれないが、彼らには"常識にとらわれず別角度から日本を捉え作品の中で表現することができる"という強みがある。

本作「犬ヶ島」の監督ウェス・アンダースは日本人が見てもそれほど逸脱していないリアリティラインを保った日本像というのを維持しつつ、先に触れた強みというのを存分に発揮している。

彼は作品の中で中世、近代、現代のそれぞれの時代代表する日本的モチーフを一つの世界で違和感なく融合させていた。

というとなんだか分かりづらいけれども、彼は現代の日本の風景の中に普段あまりお目にかかることがない小道具や日本的美術を絶妙な塩梅で溶け込ませていた。


これがまた見事の一言で、細部にまで趣向を凝らした画作りと違和感のない日本的光景というのを彼の創造性をもってより高いレベルにまで昇華されている。
ストーリーの面白いはもちろんのこと、世界観やビジュアルだけをとってみても見るに値する、素晴らしい作品だった。
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