穂苅太郎

ハービー・ハンコック ポシビリティーズの穂苅太郎のレビュー・感想・評価

4.1
 大好きな音楽(映画でも!)のメイキングは、しばしば失望したりイメージが別な方向に書き換えられたりするものだ。だから極力目に触れないように避けてきたし、MVですら邪魔だった。
 しかしこのメンツの前にそんな逃避であらがえるはずもない。むさぼるように見始めて、深夜であることを忘れてボリュームを上げ、そして結局眠れなくなった。素晴らしい。まるでライブを見ているかのような緊張感。
 この年齢にしてこの活力、モチベーション、自分や評価に対してのカウンタースピリットはどうだ。そりゃまわりはついてくる。
 例えば「USA for AFRICA」という崇高であること至極であるはずの、そのドキュメンタリーですらどこかしら胡散臭さや打算が出演者の微妙な表情から匂っていた。今作は疑心をもって鼻をひくつかせても、ただ無臭である。これはすごいことだ。
 有名無名問わず、人種国籍関係なく、音楽への向き合い方が一つだからなのだろう。「新しい素敵な何かを生み出すことへの原初的な欲求とそれが世界へと続く確信」。
 きっとこれはごく自然に発生した、ミュージシャンとして自覚した時点で持っている、絶対条件であり、世界的標準なのだと思う。今作のセッションは、これこそを前提基幹として進められているのだ。
 当たり前のことだ。でもその当たり前が欠落しつつある日本の音楽界という事実。別に欧米からだけではなく、世界から取り残される日が来るのかもしれない。

Possibilities/Herbie Hancock(P)(WEA) - Released 2005.
1. John Mayer(G, Vo), Michael Bearden(Key), Willie Weeks(B), Steve Jordan(Ds)
2. Carlos Santana(G), Angelique Kidjo(Vo), Michael Bearden(Key), Chester Thompson(Org), Dennis Chambers(Ds), Raul Rekow(Per), Karl Perazzo(Per), Benny Rietveld(B)
3. Christina Aguilera(Vo), Michael Bearden(Key), Bashiri Johnson(Per), Nathan East(B), Teddy Cambell(Ds)
4. Paul Simon(Vo), Pino Paladino(B), Steve Jordan(Ds), Cyro Baptista(Per), Jamey Haddad(Per), Gina Gershon(Jew's Harp)
5. Annie Lennox(Vo), Steve Lewinson(B), Pete Lewinson(Ds), Tony Raney(G)
6. Sting(Vo), Michael Bearden(Key), Lionel Loueke(G), John Patitucci(B), Cyro Baptista(Per), Steve Jordan(Ds)
7. Jonny Lang(Vo, G), Joss Stone(Vo), Greg Phillimganes(Key), John Robinson(Ds), James Harrah(G), Reggie McBride(B)
8. Damien Rice(Vo), Lisa Hannigan(Vo), Tomo(Ds), Vyvienne Long(Cello), Shane Fitzsimons(B)
9. Raul Midon(Vo, G), Stevie Wonder(Harmonica), Greg Philinganes(Key)
10. Trey Andastasio(G, Vo), John Patutucci(B), Cyro Baptista(Per), Steve Jordan(Ds), Jennifer Hartswick(Vo) - 1. Stitched Up 2. Safiatou 3. A Song For You 4. I Do It For Your Love 5. Hush, Hush, Hush 6. Sister Moon 7. When Love Comes To Town 8. Don't Explain 9. I Just Called To Say I Love You 10. Gelo Na Montanha
穂苅太郎

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