ぽん

マイ・ビューティフル・デイズのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

ティミー目当てで観ましたが原題「Miss Stevens」のとおり、これは英語教師レイチェル・スティーヴンスの物語なんですね。

演劇大会に出場する3人の生徒を引率して車で出かけるスティーヴンス先生。警告灯を無視しての長距離運転というシーンは精神的な余裕のなさを描写しているのかな。
冒頭の観劇シーンで涙目で呆然となって席を立てないところからしてこの先生の繊細さ、何かを抱えて壊れそうになっている脆さは伺える。テネシー・ウィリアムスの戯曲「ガラスの動物園」が好き、なんてところも。

そんな彼女が、生徒たちを連れての課外活動に出かける3日間。
学校という限定空間で授業という枠組みの中にいればそれなりに自分を保てる彼女も、半分プライベートみたいな旅先ではポロポロと本音がこぼれ、自分自身をさらけ出すようなことになっていく。

そして彼女に恋心を抱く男子生徒ビリー。これがティモシー・シャラメな訳ですが、彼自身もまた訳アリで、行動障害があって抗精神薬を服用している問題児。友達も少ないという彼だが案外、人たらし。(ズルイよティミー)
古い音楽が好きだったり実は演劇に詳しかったりと、ちょっとずつ先生との距離を詰めてくる。

夜更けに彼女の部屋を訪れ、巧いこと言って部屋に入り込んでベッドでぴょんぴょんなんてさー。跳ね続けながらず~っと「Don’t be sad!(悲しまないで)」って励ましてくれる美少年。強すぎる。

演劇大会の決勝で彼が披露する「サラリーマンの死」も素晴らしいし、その直後の感情吐露もまたスゴイ。薬を止めたせいでちょっと正常ではなくなっている不安定な男の子を、痛々しくも魅力的に演じているティミー。なんと美しいことよ。そして、こういうフラジャイルな人たちが私は好きなのだなーと改めて思う。

本作でのティミーは“トリックスター”なのですね。物語をひっかき回す厄介者なんだけど、終わってみれば彼のおかけで上手く物事が収まるという。

表面的には動きが少ないドラマだけど、登場人物の心情の揺れ動きを丁寧に描いているとても文学的な作品でした。内向的・内省的な人向けでしょうか。
ぽん

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