熊犬

ダークレインの熊犬のレビュー・感想・評価

ダークレイン(2015年製作の映画)
4.1
【ジャンル分け不可、他に類を見ない個性】

原題 Los Parecidos

1968年メキシコ。
もの凄い豪雨で外に出る事も出来ず、バスステーションに足止めを食らう男女数名。子供の出産の為に病院に行かなければいけない男、精神病を持つ子供と母親、DV夫から逃げて来た妊婦、強気な学生、シャーマンのような老婆、ステーションの職員。
それぞれがそれぞれの事情を抱える中、4時間も来ないバス。外では叩きつけるかのような豪雨。時折流れるラジオの不穏なアナウンス…
そして突然に、何かが狂いだす…
…な映画。

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な、なんでこんなに評価が低いんだ…滅茶苦茶面白いのに!
まあ、評価が低い理由も分からなくはない(ヒント:表紙詐欺)。
でも、めちゃくちゃ面白いから困ったもんだ。

肝心の内容は情報無しで観て知って欲しいのであまり触れられないんだけど、映画を通しての感触だけざっと。

序盤、じわじわと不穏。不穏さはどんどん膨らみ、不安といら立ちが色濃く空気を満たしていく…
極限まで濃くなったその空気の中…唐突に起こる「ある事象」。
いや~、凄い!今まで感じた事の無い感情。緊張と笑い、それを追って漠然と残る恐怖。
それらの感情を持ちつつ、でもとにかく笑ってしまった。いや、まじで、これでジャンルがホラーとは呼びづらい。でも、後を引く怖さ。

この映画、映像表現がまたこの映画の空気に良く作用してて、コントラストの強い"ほぼ"モノクロ映像というか。若干の色味は残しつつ、画面が暗く重たく感じる。まさに塗りつぶすようなダークレイン!この辺は監督のセンスですかね。お見事。

「ある事象」についても、納得するかどうかはともかく、ちゃんと説明がされる。個人的には結構というかかなり好きなクロージングで、なんというか…まあこれ以上言うのはやめておきます。でも、ここに納得できるかも評価の分かれ目なのかも。

何はともあれ、点数を見ただけで敬遠せずに是非観て欲しい一本。

■本日のビール『Ripe as Rain』
醸造所: Virginia Beer Co (アメリカ / バージニア州)
ネルソンソーヴィンというホップを使い、葡萄の香りがするIPA。雨上がりにブドウの木から立ち上がってくるような香り、という事でつけられた名前のビール。しっかりヘイジ―(濁っていて)、爽やかに美味しいビール。映画の不穏な雨を吹き飛ばす、雨上がりの香りのビール!
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