emily

モカ色の車のemilyのレビュー・感想・評価

モカ色の車(2016年製作の映画)
3.5

息子を事故に合わせた犯人を探しスイスの国境近くの小さな街へ行く。モカ色のクルマと金髪のオンナを手掛かりに探し当てて、人物に近づく。しかし蓋を開けてみると、

窓ガラスを使った演出、不穏に見せていく閉鎖的なカメラワーク、薄暗い色彩の中内側に隠し持つ怒りを表面に出さないように、なんとか保たれる表情。緊迫感のある距離感がジワリと埋まり、徐々に対象に近づいていく。秘めた感情はミラー越しに、その自然で見せる演技に魅了される。エマニュエル・ドゥヴォスの静かな目線と交差するのは上品なかつ何かを秘めてそうな魅惑な視線を振りまくナタリー・バイ。かすかに溢れる意味深な笑みが華麗で女性の魅力たっぷりだ。

抑制された演出にのる表情と空気感が、徐々に穏やかになり、また引き締め、程よい緊迫感を最後まで保ち、沈んだ心を奮い立たせる。女は生きる目標を得て、欲しいものを手に入れる。その後は空虚しか残らないのではない。その過程が悲しみと向き合う結果に緩やかに向かい、しっかり丸みを帯びたラストへ導くので心穏やかになる。
emily

emily