このレビューはネタバレを含みます
信仰と命の秤というテーマは、マキューアンの『未成年』を思い出した。作中シスター・マリアが言っていたように、信仰を持たない私には、その本質が一生分からないんやと思う。だから軽々しく、たとえば院長を批判したり、してはいけないんやと思う。考えを止めるという意味ではなくて、敬意や弁えとして。果てしない。
それぞれの苦しみの表れ方、向き合い方、乗り越え方。本当にそれぞれで、同じ苦しみでも人の数だけストーリーがある、と改めて。
赤ちゃんを産めば母性本能がわく、というのだって人それぞれ。そうじゃない人だっている、それが自然。
戦争。どれほどの…本当にどれほどの数の物語があるんやろう。その一端にふれるたび、気が遠くなる。一体、まだ、どれほどの…
最後赤ちゃんが6人いて、あれ?と思う。ヘレナは助かったの…?そんなことある?と思いつつ、そうであれと願ってしまう。
光あふれるラスト。現実はあそこで「終わり」じゃないけれど…「夜明けの祈り」という邦題を思い出して泣きそうになった。あのラストは、夜明けの、希望の祈りだった。