しの

エクスペンダブルズ ニューブラッドのしののレビュー・感想・評価

3.0
豪華キャストで売っていたシリーズで、しかも前作から9年ぶりの4作目ともなると、普通だったらシリーズの「格」みたいなものを意識しそうだが、全くその気がない! その軽さ自体は自分はむしろ好意的に見た。“いい年して……“みたいな価値観を吹き飛ばす軽さだ。

『エクスペンダブルズ3』でやりかった新旧世代の云々みたいな話は全部『トップガン マーヴェリック』が上手くやってしまったし、そもそもあの作品は映像の質も含め無理している感が出ていた。なので今回は開き直って「いつまでも消耗されてやるぜ」精神をB級映画のノリでやったのは、むしろ自分は良いと思った。冒頭、9年ぶりの続編でバーニーとクリスマスが何をやってるかというといきなり超くだらないので、逆に周波数をチューニングできる。

今回もVFXのクオリティは軒並み酷いし、もう冒頭シークエンスからして編集の時間軸すらおかしいのだが、「格」がないこと自体にはむしろ好感が持てるし、前作と違って身の丈に合ったスケールの話をやっているので一貫性はある。テンションとしては継承というより 「今回はステイサムを活躍させてみました」くらいなもので、他メンバーの活躍はあまりないし掛け合いも面白くない。ただこのシリーズは2作目が特殊なだけで、元々こんなもんだったとは思う。にしてももう少し何とか……とも思うのだが。

オチについては、よく考えるとやってることは最悪なのだが、一瞬こちらもあの飲み会のテンションに呑まれてしまったからヤバい。まぁそこは雑に最悪だなというところ含めてB級映画のノリなのでまだ良いにせよ、自分はそれより女性表象の扱いの方が普通にイヤだった。

他にも、いくらB級映画ノリとはいえ普通にダメだろ……という部分はある。ただでさえオールスター感が薄れたのに、新キャラすら活かしきれてないのは寂しい。終盤のラスボスの正体に関するプロットツイストもそこまで活きない。あと終盤、予定調和でも面白く見せてくれればいいのだが、あの満を持して……の見せ方は普通に下手で普通にダメだと思った。

身も蓋もないことを言えば、元々このシリーズをそこまで面白いと思っていないし思い入れもない自分だからこそ好意的に観れたというのは多分にあるだろう。ただ、ここまでマジのB級映画に近づいたのに何故かそこまでチャチく感じずに観れてしまうのもまた事実で、それは「消耗されることにも全力」な役者のパワーが補填しているのだと思う。

そう考えると、ニューブラッドとかいう邦題の適当さが一周回って良い。「なにがニューブラッドだよ!」という作品の後味とマッチしている。大それたことをやらずに、しかしちょっと主役を譲ったりなんかして、でも結局はいつもの楽観的な飲み会で締めるという気負わない「いい年した大人」のあり方に、自分はむしろ元気をもらった。

※感想ラジオ
【ネタバレ感想】10年ぶりの続編がこれ?『エクスペンダブルズ ニューブラッド』の衝撃の「軽さ」 https://youtu.be/7n4vHpSMeT8?si=1_1BGtx2Qip2yvcp
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