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フリッカーのTnTのレビュー・感想・評価

フリッカー(1965年製作の映画)
3.5
 今作は警告文(ここだけ伴奏も映画風してるのだが)、タイトルクレジット、そして白と黒のフレームが点滅する本編だけしか存在しない。そのフリッカーの内にあるはずもない形の変化を見て、色の変化を感じた今、「写真が真実なら、 映画は毎秒24倍真実だ」というゴダールの「小さな兵隊」の24倍の真実すら嘘に思えてしまう。ミニマルな要素だからこそ凌駕してしまう力。ゴダールの某台詞は、実際ゴダール自身は信じてないと思うけれども、あたかも彼の言葉のように扱われるよね、箴言チックなだけに。今作を見たら「映画は毎秒24回の明滅による錯覚だ」と言えるだろう。

 考えてみれば、映画は人が知覚できないほどの短い黒いフレーム(人が視認できるのは18分の1秒らしい)がそれぞれのショットを寸断することで観れるのであり、その機構自体が大方人を騙している所がある。そんな映画の白と黒の暴力に晒される時、映画って怖いなーと思うのだった(怖い監督ギャスパー・ノエも使いがち)。これがまた音楽がフリッカーに合わせたシンセで、バチバチ音してるだけで味気ないけど、ずっとそれだけ聞いていると怖くなってくる。展開が無いことは、今この時を延々に味わうのではという不安感を掻き立てるものである。そもそも30分ほどある尺が十分に辛い。これ今スマホで片手間に観ただけだから耐えれるが、劇場のスクリーンいっぱいの光と闇でやったら、見てられないだろう。そもそも今作、白と黒のフレームであるはずのものを錯覚して見ているので、”鑑賞”できていると言うことができるのかも怪しい。見誤りしかしてなかったのでは?

 知覚できたこと。白と黒のフレームの中に細胞分裂したみたいな丸の集合が見える。赤と緑のモアレみたいのが見えてくる。目が死ぬ。何を観ていたんだという虚無を覚える。
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