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あの日、兄貴が灯した光のmofaのレビュー・感想・評価

あの日、兄貴が灯した光(2016年製作の映画)
4.2
【きちんと泣かせてくれる、
泣かせにきてる映画】

いや、泣きましたね・・・・。
分かっちゃいるけど・・・
分かっちゃいるけど、泣けました。

私、こういう作品には、
ちょっと厳しい視線になってしまうんです。
泣かせにきてる・・・・
というのを少しでも察知しちゃうと、
物語の不幸が全て、泣かせる為のアイテムのような感じがしてしまうんですよね。

この作品も、そんな感じだろうな・・
と想像はしていたし、
もう、そのまんま。
なんなら、全身全霊で泣かせに
かかってきているような作品なんですよね。

でも、それが、不思議な事に、
全く、そのあざとさや、
いやらしさを感じないんです。
結果、もう美しい涙がまぁ、
流れる事になりました。

それは、もう、
この兄弟が大好きになれた事。
とりわけ、ドゥシクという存在を、
深く愛せた事が、
勝因じゃないかな・・・?と思うんですね。

詐欺を繰り返し、
ちゃらんぽらんな人生を
歩んできたドゥシク。
けれど、彼の本質が見え隠れする演技が、
本当に素晴らしいんですよね。
 根本的に悪い人じゃないって感じが、
観ていても、よく分かる。

それは、弟との接する中で
表現されるだけではなく、
ご近所さんとの繋がりの中でこそ、
彼の人間性が見事に表現されて
いたからじゃないかな・・・と思います。
 はじめは、ご近所さんと仲の
悪い感じだったけど、
一緒に焼肉を食べたり、
いつの間にか仲良くなっている。
 そこにドゥシクの人懐っこさや、
優しさが滲み出ているんですね。

もちろん演技ドルと言われる
ギョンス様の視力を失った演技も
素晴らしく、
兄を想う弟感が半端なく、
その想いがずっと切ない。

物語は、
ある意味とてもシンプルなんだけど、
キャストの演技が、
もの凄い深みをもたらしている事が、
この作品を、「泣かせにきてる」だけの
ものにしなかった。

障害者と健常者、
生と死
希望と絶望
 これら2ツの対比が、
切なく美しく際立つ秀作です。


☆以下、ネタバレです・・・・☆

ドゥシクとドゥヨンの関係も、
素晴らしいんですけど。
個人的には、
ドゥシクとそのご近所さんとの関係性に、
思わず泣けるシーンが多かったんですよね・・・・

始め、この人なんで、
こんなに出てくるねん・・・と
思っていたけど。

まさか、
これほどの感動をもたらしてくれるとは。

ドゥシクの異変に気付いてくれた。
弟に病気を隠し、痛みにこらえながら、
電話をするドゥシクの肩に、
そっと手を添えてくれた。
 遠くで頑張る弟への電話。
ついに弱音を吐くドゥシク。
 それを横で聞いて、涙を流してくれた。

ドゥシクが亡くなってしまった後も、
ドゥヨンの面倒をみようとしてくれる。

もう、キム・ガンヒョン様の
大勝利~って感じ。
影の立役者は、キム・ガンヒョン様です。

 自分の病気を知ってから、
ドゥシクが弟に柔道をさせようとするのは、
パラリンピックで金メダルを取れば、
年金が貰えるから。

けれど、柔道の事故で失明した彼は、
恐怖を感じてしまいます。
棄権したいという彼に、コーチは、
兄の病気について触れます。
 正直、
「このタイミングで言っちゃう??」
って思ったけど、
コーチの一か八か・・・・
という気持ちも、
痛い位分かりましたね。

 そして、目の見えない弟の為に、
自宅を改造し、ラーメンを沢山買い置き、
コップも割れない素材のものに。
 残して行く弟の為に。
兄の優しさ。

チョ・ジョンソク様の死へと向かう
演技も素晴らしかったです。

始まりと、最後。
まるで兄と弟の立場が逆転しているのが、
切ないけれど。
兄が、弟を救って、
去っていったように思えて。
それは、互いにとって、
悲しいだけではない
幸せと喜びをもたらしたように思えます。
だからかな。
視聴後に広がるのは、明るい希望の光。
それは、確かに、兄貴が灯した光。

 兄が亡くなったけれど、
完全に自立出来ているドゥシム。
「今日もイケてるな」
「生意気なこと言いやがって」

泣ける。

よく考えたら、
「泣かせにきてる」作品でありながら、
ここまで、きちんと
「泣かせて」くれる作品も珍しいですよね。
 是非、ご視聴あれ。
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