ダイアー教授

三度目の殺人のダイアー教授のレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.3
題:器の意味
製作:2014年、日本
監督・脚本:是枝裕和
主演:役所広司、福山雅治、吉田鋼太郎、広瀬すず、斉藤由貴

皆様は生まれてこなかった方がよかった人間がいると思ったことはありますか?
私はあります。

本作、ただの犯人暴き話ではないです。
「社長を殺した犯人は?」が話の軸ですが、作品の核心はそこにはありません。

作中“器”という言葉が出てきます。
私はこの作品を“器”に、いろいろ思いを巡らせました。
2つにまとめてレビューします。

1.役者という器
役者って何だろう?
喧嘩もしたことない優男が暴力団を演じ、プライベートでは子煩悩なパパが殺人鬼を演じ、愛妻家が不倫に溺れるおっさんを演じ、ベジタリアンが食人鬼を演じ、
無類の女好きがゲイを演じ、おっさんが女形を演じるのが俳優だ。
女優も然りだ!

役者は脚本に書いてあることを体現する装置、つまり“器”ではないだろうか?

2.映画という器
映画という媒体に“器”の機能があるのではないだろうか?
本作を観ながら「この世はこうあって欲しい」という私の願望が、映画に映し出されているような気がしたのだ。

「生まれてこないほうがよかった人間ってのが、この世にいるんです」
と、いう台詞がある。
これは是枝監督の考えではないだろうか?
そして私たちもそう思うことはないだろうか?

最近だと『イコライザー』みたいな世直し映画や、ひと昔前だとチャールズ・ブロンソンのビジランテ映画を“器”に我々はその念願を叶えてはいまいか?

幾重にも考えさせられるとても深い映画であった。