広島カップ

人間狩りの広島カップのレビュー・感想・評価

人間狩り(1962年製作の映画)
4.0
自身の子供の頃の体験から強く犯罪者を憎むようになり刑事になった男(長門裕之)。
時効まで36時間と迫った殺人犯を執念深く追いかける。
「犯罪者は野獣だ!俺はそいつらを狩ってやる!」という事でこのタイトルになっている。

全てを犠牲にしてとにかく悪を憎むこの男は当然のように孤独に日々を過ごし他人への優しさを失う。己の孤独を埋められる唯一人の女(渡辺美佐子)を愛する気持ちはあるが犯人の逮捕を優先してしまう。彼はそんな自分自身のどうしようもない内面から決別したいと苦悩する。
やがてクライマックス、彼は犯人逮捕と共に自分自身の進む道を選ばなくてはならない局面に直面する...

長門の演じた若くてパワフルでハードボイルドな刑事が非常に魅力的。
また画面の光と影がまるで白黒のヨーロッパ映画のような下町の駅の場面が新鮮。

今日まで映画を観て来て山田洋次の『学校』(1993)、是枝裕和の『万引き家族』(2018)で私の住む街がロケ地として使われていて、両作品を観賞中に「あっ、あそこだ!」とハッとした経験があった私。
そんな中で本作はど真ん中の作品でした。私の家の最寄りの駅がこんなに素晴らしい舞台装置になっていたなんて知らなかったし誇らしい。もっとも私が生まれた頃の昭和の景色で今は全く様相を変えていますけれど。
その最寄り駅は他にはない特別な駅という訳ではないのですが、白黒映画の光と影とカメラアングルで見事に"映画の中の駅"に変身していてビックリしました。
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