‶真実はめったに純粋でなく 決して単純でない”
アメリカ全土を欺いたJ・T・リロイの ‶誕生から死” までを描く実話もの。
電話応対は作家本人。人と出会うのは影武者。『ブラック・クランズマン』と同じですな。
嘘偽りをまるで積み木を積み上げていくように重ねていき作り上げたJ・T・リロイ像。徐々にバランスが悪くなっていくも、もう後には引けないところまで来てしまった二人。積み上げ過ぎた虚構は、既に二人の手が届かないところまでうず高くそびえてしまっていた。それは、ほんの些細なことがきっかけでガラガラと一気に崩れ落ち、真実が明るみになってしまう日が、いつ来てもおかしくないといことを意味する。ローラとサヴァンナは(どちらかと言うと特にローラの方は)、それをわかっていながらもやめられない止まらない状態になっていたんだろうな。
メディアも世間もまんまと騙されたわけだけど、そこだけ切り取って考えてみると、一昔前に騒動になった『STAP細胞事件』に似てるなと思った。
本作の原作となったのは、実際にJ・T・リロイに扮していたサヴァンナ・クヌープの回顧録。作家が生んだ架空の人物を演じていた人物が作家になっていたという、このややこしさよ。
「時にウソは真実を超える」